オフサイド・トリップBACK NUMBER
ポジショナルプレー、これが決定版。
グアルディオラに直接聞いてみた。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2018/02/18 08:00
戦術家としても偉大なグアルディオラだが、それを説明する能力を兼ね備えていることも指導者の重要な資質なのだ。
組織サッカーをきわめて、フリーマンを作る。
ポジショナルプレーはあくまでも組織的なアプローチであり、ディシプリンを徹底すればするほど、うまく機能するようになる。
ただしペップの発言は、彼がメッシのようなフリーマンをピッチ上に作り出そうとしてきたことを物語る。いささか形容矛盾のようになるが、組織サッカーをきわめることによって、組織をポジティブな方向で壊せる選手を登場させようとしてきたと言ってもいい。その試みが結実したのが、自らがバルサを率いていた頃のメッシのプレーだったのである。
ペップ曰く。
「ポジショナルプレーという考え方は、硬直した方法でプレーする発想のように聞こえるだろうが、実際には選手がピッチ上の異なる場所に移動する自由を与えてくれる。敵をピッチ上の(狙った)エリアに誘導していき、自分たちがスペースを活用できるようにするための発想にもなっている」
メッシがいないチームでペップがしたこと。
組織の完成度を上げつつ、いかに組織の枠にとらわれない人材を育むか。ペップはバルサやメッシと袂を分かった後も、この難しいテーマに取り組み続けてきた。
バイエルンを率いていた頃も、シティを指揮するようになった現在も、ペップが率いるチームは最も戦術的なプレーをすると同時に、最もフレキシブルな対応をする集団となってきた。
それどころか、バイエルンやシティにはメッシのような選手がいない分だけ、フレキシブルな状況を生み出すためのノウハウは、さらに研ぎ澄まされてきた印象さえ受ける。
たとえば昨シーズンのシティは3-2-2-3のW-Mシステムで臨んだことも多かったが、このシステムは試合中、意図的に2バックにも4バックにも変化した。それに応じて選手も、ポジショニングと役回りを順次切り替えている。MFのフェルナンジーニョなどは、驚くほどマルチな仕事をこなせる選手に成長した。
その意味でポジショナルプレーとは、決して監督が1人で導入できるようなアイディアではない。
もちろん駒の配置を決めていくのは監督だが、チェスと違って常に駒を直接動かし続けられるわけではない。一旦ホイッスルが吹かれれば、ゲームは選手に託される。
だからこそポジショナルプレーを実践する際には、選手の戦術理解度と判断力、そしてチーム全体の練度も大きく問われてくる。