オフサイド・トリップBACK NUMBER
ポジショナルプレー、これが決定版。
グアルディオラに直接聞いてみた。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2018/02/18 08:00
戦術家としても偉大なグアルディオラだが、それを説明する能力を兼ね備えていることも指導者の重要な資質なのだ。
ペップに影響を与えた戦術家たち。
「ポジショナルプレー」という概念は、実はサッカー界でも決して目新しいものではない。「Juego de Posicion」というスペイン語そのものは以前から存在していたし、ポジショニングという観点でサッカーを進化させてきた戦術家としては、クライフやファンハール、アリゴ・サッキ、ビエルサなどの名前が挙げられるケースも多い。
クライフが4-3-3にこだわる理由として、ピッチ上にダイヤモンド(パスコース)を最も多く描けることを指摘したのは有名だし、ファンハールは同じ発想で、各選手がケアすべき「勢力圏」という概念を精緻化し、ボールを奪われた際には、すぐにボールを奪い返せるようにする必要性を説いた。この発想は後に、ペップの「5秒ルール」に昇華していく。
一方アリゴ・サッキは、イタリア伝統のカテナチオやマンツーマンに依存するのではなく、4-4-2をベースにゾーンディフェンスとプレッシングを組み合わせることを試みた。DFからFWまでの距離を30メートルに保ちつつ、選手同士の横方向の動きもシンクロさせるために、ピッチ上を24分割して徹底的にポジショニングを意識させている。
ポジショナルプレーに関する議論では、「5レーン」という単語も登場するが、これはサッキが正方形で区切ったブロックを、ピッチの縦方向に5分割し、選手のポジショニングやサポートのしかたを、さらに細かく規定したアプローチだと考えればわかりやすい。
そして日本でも信奉者の多いビエルサ。「エル・ロコ(変人)」の異名をとる戦術家は、ピッチ上に描かれる布陣と試合の“棋譜”をひたすら研究し続けた末に、こう断言する。
「サッカーには125のパターンしかない」
彼もグアルディオラに多大な影響を与えた人物だった。
ポジショナルプレー=ポゼッションではない。
これほど長い伝統がありながら、「ポジショナルプレー」という単語が近年注目を浴びるようになったのは、やはりペップによるところが大きい。
特にバルサの監督時代、ボールポゼッションが7割から8割を超え、6冠を達成してからは、どうすればあんなサッカーができるようになるのかと、誰もが秘密を探ろうとした。
ただし、ポジショナルプレー=ボールポゼッションを高めるノウハウ、ではない。
ポジショナルプレーとは、ピッチ上で優位性を確保し、敵のストロングポイントを打ち消し、勝利を手にしていくためのノウハウにすぎないし、監督が目指すサッカーやチーム事情(選手の特徴)、採用する戦術システム、対戦相手によって求められるプレーは当然異なってくる。