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清宮幸太郎の肉体を4年半で作った男。
「何が違うって、ポテンシャルです」 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph bySports Graphic Number

posted2018/01/31 11:00

清宮幸太郎の肉体を4年半で作った男。「何が違うって、ポテンシャルです」<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

高1の冬、ジムにて。体格的には完成しつつあるが、ビルドアップ度は現在と段違いだ。

「何が違うって、そもそものポテンシャルですよ」

 竹下は振り返る。

「僕は過去の経験から、スラッガーと呼ばれる選手も数多く診てきましたが、幸太郎のような選手はなかなかお目に掛かれない。何が違うって、そもそものポテンシャルですよ。お父さんが日本ラグビーのトッププレーヤーでお母さんも大学ゴルフ部の主将という、遺伝子レベルでのフィジカルエリート。

 ただね、今となっては子供の時から将来が約束された天才だと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、はじめてうちに来た中学2年生の時、幸太郎は腰椎の分離症で、プレーができず、苦しい状況に置かれていたんです」

 清宮幸太郎は、当時から規格外の存在だった。小学生にして投げては130km、打っては世界大会で大会最長距離の本塁打を放ってリトルリーグ世界一に輝くなど、すでに各所から注目を集めていた。

 しかしその圧倒的なパワーに子供の身体がついてこられなかったのか、中学1年生の終わりに腰を疲労骨折して1年間リハビリ生活を送っている。その時に将来を見越した身体をつくるためと、門を叩いたのがデポルターレクラブだった。

3回生まれ変わったレベルの人間的な達観。

「最初はケガのリハビリからでしたが、高校野球、そしてプロを見据えての土台作りというところから、無理に焦らず、地道なトレーニングの積み重ねで徐々に身体を作っていきました。

 幸太郎は根がまじめ……というか、人間的に『すでに3回ぐらい生まれ変わってきたんじゃないか?』と疑惑が出るほど達観しているというか、周りがどんなに騒いでも決して自分を見失うことはない。地味なトレーニングも4年の間、ごまかさずにやってきました。その結果として、本塁打記録などもそうですが、ストレングス(力/強さ)における“スラッガーの相場”としても幸太郎はこれまでの高校生のレベルを遥かに超えています。

 ただ、ここからのフィールドはプロ野球の世界です。必要なものは“プロのスラッガーの相場”であり、そこを抜ける存在にすること。筋力量や柔軟性、1年間143試合戦える持久力など、高校野球が終わったのち、我々は対プロ対策としてはじめて3段階ほどレベルを上げるために、集中的な強化を行いました。これは幸太郎をみてきた4年間ではじめての試みでしたね」

【次ページ】 1年目からガチガチの結果を残しにいく姿勢。

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