野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
清宮幸太郎の肉体を4年半で作った男。
「何が違うって、ポテンシャルです」
posted2018/01/31 11:00
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by
Sports Graphic Number
この日も、男は例年と同じように深夜までデスクワークに勤しんでいた。
明日はついに納品の日である。今日ここまでにできること、やるべきことはすべてやってきた。最初の出会いから4年半。疑いようのない史上最高の素材。そのポテンシャルのひとつひとつに驚嘆しつつも、じっくりと大切に、焦らず、筋繊維の一本一本を慈しむように、丹精込めて作り上げてきた。
男は過去のトレーニングデータを愛おしく目で追いながら、チェックリストの最後の項目に印をつけると、深夜の作業場でひとり特製のプロテインを開け、乾杯した。
「……いい状態に仕上げることができた」
1年のうちでもっとも充足感を得られるこの時間。毎年毎年、ドラフトで指名された選手をプロ野球の世界へ最高の状態で送り出すことを誇りとしてきたが、今年のそれはこれまでとは意味が違っていた。
清宮幸太郎は“人類を進化させるキーパーソン”?
清宮幸太郎。日本国民の注目を集める、将来のプロ野球界を背負って立たなければならない最高の逸材。彼が最初にこの場所へ訪ねて来てから4年半。幸太郎は期待通りの成長を遂げ、高校生史上ナンバーワンスラッガーの勲章を手にして、プロの世界へと羽搏いていく。
この一大ミッションに挑んだ男の名は竹下雄真。昨年の6月にこの連載でも取り上げた西麻布デポルターレクラブの代表である。心技体脳内物質腸内細菌業界人脈霊験あらたか、ありとあらゆる側面から“人類を進化させる”ことを野望とし、それを実現させてきた男。このクラブの入会資格でもある“ワクワクする選手”、そして“人類を進化させるためのキーパーソン”として、清宮幸太郎という存在ほどの適任者は他にいない。
野球界、そして人類の未来に対する企てのために、竹下はデポルターレ内外の総力を結集し、“チーム幸太郎”を組織した。