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大阪桐蔭、「最強世代」のジンクス。
前評判が高い時ほど甲子園では……。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/01/26 17:00
甲子園の常連となった大阪桐蔭と西谷監督。それでも気を緩めるどころか、危機感をもって戦いに挑む。
「100回大会優勝をターゲットにしたわけではない」
また、現チームの評判が上がり続ける要素として、今夏で甲子園が100回大会を迎えることも関係している。以下の噂は、その一例である。
「大阪桐蔭は100回大会を迎える2018年の夏に優勝する気でいる。そのために、全国から有望な選手をかき集めた。中学時代から146キロを投げた根尾を獲りにいったのは、そのためだ」
しかし当然ながら、勝ちにこだわる西谷監督は、100回記念大会であっても何回大会でも、常に優勝を狙うタイプだ。目標設定だけでなく、スカウティングの段階からより強いチームにしようと毎年、選手を追いかけている。
「もちろん100回記念大会は盛り上がるでしょうし、その大会の甲子園に出たいし、優勝したいと思っています。選手たちにも『100回大会には出よう』と話しています。でも、それは今年になってからのことで、以前から100回大会を目指して選手を獲りにいったわけでも、練習を厳しくしているわけでも、選手起用したわけでもありません。
99回大会も101回大会も、僕は優勝したいと思ってチーム作りをしています。2年生が多いチームで優勝したから評価が高いのは分かりますけど、今までの中で一番強いチームだという印象を僕は持っていないです」
好投手が3人揃っていることの悩みもある。
西谷監督は現チームに物足りなさを感じている。それは強豪チームだからこその悩みに直面しているからだ。
例えば投手陣は、昨夏の甲子園で好投したエースの柿木蓮、センバツの胴上げ投手となった根尾、身長190センチから投げ下ろすピッチング魅力の左腕・横川凱とハイレベルだが、枚数が多いからこそ、個々の伸び悩みにも繋がっていると見ている。
「もし投手陣に柿木しかいなければ、全試合彼が投げる気になりますから、責任感が生まれてきます。でも、3人いることで『きょうは誰やろな』みたいな空気も生まれる。調子が悪かったら代わる投手がいることで、どの投手にも強さが足りないと感じています。選手の将来のことを考えれば、投手の登板過多を防ぐには枚数が多い方がいいですけど、その分、成長度合いが1枚のケースと同じようにいくかといえば、そういうわけではありません」