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大阪桐蔭、「最強世代」のジンクス。
前評判が高い時ほど甲子園では……。
posted2018/01/26 17:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
第90回記念選抜高校野球大会に出場する36校が発表された。
出場校が増えた今大会は、昨秋神宮大会の覇者・明徳義塾、春2度目の優勝を狙う日大三、北海道地区代表の駒大苫小牧など多士済々の顔ぶれがそろった。中でも注目を浴びているのが、連覇を目指す大阪桐蔭だ。
昨年の優勝メンバーが多く残る大阪桐蔭への評価は高い。投手と野手を兼任する根尾昂や昨夏のU-18W杯のメンバーだった藤原恭大ら5人のドラフト候補を擁し、「最強世代」と称される。
神宮大会準決勝では長崎の創成館に4-7で完敗。にもかかわらず評価が変わらないのは、今チームへの期待に加えて、「大阪桐蔭=優勝候補」というイメージが定着したこともあるだろう。
とはいえ名だたるOBがプロで活躍している同校だけに、「最強世代」という下馬評はいささかオーバーな気もする。
「最強世代はネット社会が作った虚像だと思います」
「監督になってから25年目くらいになりますけど、今年のチームがどれだけ強いかといったら、上から数えて10番目くらいです。“最強世代”といわれるのはちょっと恥ずかしいですね。去年の優勝を経験した選手が多いのは確かですけど、それはプラスになるかマイナスになるかは別の話ですから。(最強世代は)ネット社会が作った虚像だと思います」
大阪桐蔭の指揮官・西谷浩一監督もそう釘を刺している。
謙遜ではない。多くの指導者とも通じることだが、成長途中の段階で手放しで「強いチームだ」と口にする監督はそうはいないだろう。高校球児のゴールが夏の大会と仮定すれば、今は「最強チーム」をつくる過程なのだ。
ただ西谷監督が「最強世代」を否定する背景には、心のどこかに「最強チームと言われる世代に限って、全国制覇を逃している」という過去の例があるからだろう。西谷監督は大阪桐蔭の“最強”とされた世代が苦汁をなめた過去を忘れていない。