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武豊とキタサンのハッピーエンド。
名馬の枠を超えた絶対スターの引退。 

text by

島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2017/12/25 11:30

武豊とキタサンのハッピーエンド。名馬の枠を超えた絶対スターの引退。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

早くから注目されていた馬では決してなかった。そのキタサンブラックが国民的スターになるのだから、競馬は面白い。

ルメールもキタサンブラックの鼻筋を撫で……。

 レース直後、出走馬たちが検量室前に戻ってきたとき、スーパースターの引退レースならではの印象的なシーンがあった。2着のクイーンズリングに騎乗したクリストフ・ルメールがキタサンブラックに歩み寄り、鼻筋を撫でて勝利を讃えたのだ。

 キタサンブラックは、来年から社台スタリオンステーションで種牡馬となる。60口で、総額13億5000万円でシンジケートが組まれることになった。

 北島三郎オーナーはこう話した。

「新しい道を進ませてやりたい。何年かのちに子供たちが走るときは、北村君(菊花賞などで騎乗した北村宏司騎手)や武さんに乗ってもらいたいですね」

 清水久詞調教師が「早く子供を育てたい」と言えば、武も「北村君とも話していたのですが、種牡馬として絶対成功すると思う。楽しみです」と太鼓判を捺す。

 高い競走能力と立派な馬体、そして、ローテーションを一度も休むことなく使われてきたタフさを、多くの産駒に伝えていくことだろう。

スターホースは、想像力の範囲外からやってくる。

 ひとつの時代が終わった。

 誰もが知る国民的歌手が、レース終了後、愛馬に合わせてアレンジした持ち歌をスタンド前で歌うなど、この馬が菊花賞を勝つまでは考えられなかった。

 大ブレイクするヒーローというのは、私たちの想像力の範囲外から、突如として飛び込んでくるものだ。

 今はその姿を想像することすらできない、新たなタイプのスターホースが、いつかまた現れる。

 それはどんな馬なのか。その背にいるのはどの騎手なのか。

 わかっているのは、出会うのは競馬場だということだけだ。

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