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武豊とキタサンのハッピーエンド。
名馬の枠を超えた絶対スターの引退。
posted2017/12/25 11:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
イブの中山競馬場に10万人の「ユタカコール」と、北島三郎オーナーの『まつり』の歌声が響いた――。
第62回有馬記念(12月24日、中山芝2500m、3歳以上GI)を、武豊が騎乗した1番人気のキタサンブラック(牡5歳、父ブラックタイド、栗東・清水久詞厩舎)が優勝。ラストランとなったこのレースが最多タイのJRA・GI7勝目となり、獲得賞金歴代トップに躍り出た。
王者キタサンブラックの強さばかりが目立つレースだった。
好スタートから内枠を利してハナに立つと、あとは淡々とマイペースで進んだ。勝負どころでも手応えは余裕十分。直線で後続を突き放し、1馬身半差で逃げ切った。
「スタートがよければ先手をとりたいと思っていました。馬をリラックスさせることに専念したのですが、1周目の4コーナーではやはり行きたがってしまった。何とかなだめ、ゴール板あたりから、いいリズムで走ってくれました」
そう話した武は、900mから1300mまでの2ハロンを13秒3、13秒2に落とし、自身に有利な流れをつくり出した。
この日の出来なら、突つかれても振り切ったのでは。
去年は、2周目の3コーナーでサトノノブレスに突つかれて早めに動き、サトノダイヤモンドに差されてしまった。それに対して、今年はどの馬にも絡まれることなく3、4コーナー中間の勝負どころを迎えた。
「4コーナーで手応えがよかったので、後ろを待つことなく、早めにスパートをかけました」
武がレース前から何度も言っていたように、キタサンブラックは、去年よりずっと強くなっている。仮に去年のように突つかれたとしても、この日のキタサンブラックなら楽に振り切っていたのではないか。
「でも競馬だから、何があるかわからない。楽観するところはひとつもなかった。1メートル、1メートルを丁寧に乗りました。1メートルずつクリアして2500メートルになった、というレースでした」
これまでキタサンブラックに騎乗したなかで、今回が一番緊張したという。
「すごいプレッシャーがありました。でも、名誉なプレッシャーなので、それを味わっていました」