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機動力の広島で、鈍足の4番が光る。
松山竜平「新井さんゆっくりして」 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2017/12/20 07:00

機動力の広島で、鈍足の4番が光る。松山竜平「新井さんゆっくりして」<Number Web> photograph by Kyodo News

走力に優れた選手が多い中、松山の立ち位置は明確だ。とにかく打って返す。それができれば主砲として固定されるだろう。

足が遅くても、次の塁を狙うという姿勢は持つ。

 機動力野球を標榜するチームの中で、走塁への意識が低いわけではない。広島の機動力野球は俊足選手ばかりのものではない。ベテランや外国人選手にも積極的に次の塁を狙う意識が徹底されていることにある。松山も足は速くないが、走塁への意識はある。

「足が遅くても、次の塁を狙うという姿勢は持っている。当然手を抜いて走ろうと思ったことなんてない。1点を取ろうと思えばケガを恐れていてもいけない。前の走者が出れば僕らが返す意識は持っている。下位打線でも足が速い選手がいれば、僕らが出ても次の塁を狙おうとはする」

 バットで今のポジションを奪い取ったものの、それだけではない。広島野球の1つのピースとなるために、やらなければいけないことはある。

「新井さんの姿を見て、これが4番なんだと思った」

 2015年に広島に復帰した新井貴浩の存在が、松山の打者としての本能を駆り立てた。

 新井はバット1本で日本を代表する選手に上りつめた。松山と同じ大卒から7年目の'05年に本塁打王を獲得。FA移籍した阪神での7年を経て広島復帰しても、その存在感は際立っていた。頼れる信頼感と、ここぞの勝負強さ。打者としての重みを感じた。

「新井さんの姿を見て、これが4番なんだと思った。自分も新井さんから4番を奪いたい」。やはりバットだけでも、強い存在感を発揮できる――。

 鈴木と新井に臨む来季は、秋季練習から新井がいる一塁に本格挑戦する。これまでも外野と一塁を守っていたが、今季5試合という一塁での出場数が首脳陣からの信頼の薄さを物語る。一塁を守れるようになれば起用の幅は広がり、目標に掲げる全試合出場も見えてくる。

 成功と失敗、ケガや歓喜により、年輪を重ねた幹は大きな柱となった。

「新井さんにゆっくりしてもらおうと思います」

 広島の機動力野球の中で大きな重しとなる存在へ。機は熟した。

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