箱根駅伝2018BACK NUMBER

名門復活の理由はどこにあるのか。
順天堂大学・長門俊介監督が見せた手腕。 

text by

折山淑美

折山淑美Toshimi Oriyama

PROFILE

photograph bySankei Shimbun

posted2017/11/24 11:30

名門復活の理由はどこにあるのか。順天堂大学・長門俊介監督が見せた手腕。<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

「選手たちにメチャクチャ自信がない」

「順大に戻って最初に感じたのは、選手たちにメチャクチャ自信がないんだなということでした。僕らの頃の順大は入学前から“紫紺対決”で注目されていたし、そこにスカウトされたということでみんなが自信や誇りを持って走っていたんです。でもコーチとして戻った時にはそんなオーラはないし、高校時代に強かった学生もいるはずなのに、みんな自信を持てず、ダラッとしているような印象を受けました。予選会で落ちて本大会出場を逃してしまって、周りからもいろいろ言われ、それで自信を無くしているところもあったと思います」

 まず選手たちに伝えたのは、常に優勝争いをしていた自分たちの頃のチームの雰囲気や、どういう気持ちで試合に挑んでいたかという想いだった。だが驚いたのは、自分たちの時代の話が、悪い部分だけが膨れ上がって伝えられていたことだった。

 長門監督の現役時代は1年時から主力になる選手も多く、当時はオンとオフの切り替えが非常にハッキリしていた。私生活や練習でも「やる時はやる、遊ぶ時は遊ぶ」というメリハリがあったという。その中の「遊んでいた」という部分だけが伝わってしまっていたのだ。

「彼らが口にしていたのは『強かった時のような練習をしたいけれど、それは強い人だからできたもので、僕らにはできない』というものでした。やってみたい気持ちはあるのに、そこに踏み込む自信がない。そこは指導者が選手の力を考えてやらせなかったのかもしれないけれど、僕らが“やっていた”ことが伝わっていなかったんです」

記録会の記録だけでは、本当の実力ではない。

 また、今の選手たちには「記録偏重」の傾向もあったという。

 順大は元々、澤木啓祐元監督(現 名誉総監督)の意向もあり、好記録を出す為に条件が整えられた記録会には選手をあまり出場させない方針だった。記録会の記録だけでは、本当の実力ではない。それでも選手たちは数字を気にしてしまう。長門は「レースの前に、自分も14分ひと桁の記録を持っているのに『あの選手は13分台を持っているから』と口にする選手もいた」と苦笑する。

 記録会に絶対に出さないと押さえつけることはないが、今でも記録会を走らせる時は、「今回は記録を出すのが目的ではなく、競り合うレースを経験する為だ」などと、目的を明確にするようにしているという。

 長門監督が2011年にコーチとして順大へ戻ってきた時に入学してきた選手の中には、主力選手になって現在も実業団で走っている松村優樹(現HONDA)、和樹(現愛知製鋼)兄弟など強力な選手がいたこともあり、そんな意識も徐々に浸透してきているという。中でも、ある選手の存在が、チームのマインドを変えるのに大きな役割を果たした。

【次ページ】 「順大は優勝を目指すチームなのに……」

BACK 1 2 3 4 NEXT

ページトップ