第94回箱根駅伝(2018)BACK NUMBER
名門復活の理由はどこにあるのか。
順天堂大学・長門俊介監督が見せた手腕。
posted2017/11/24 11:30
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph by
Sankei Shimbun
1980年代の4連覇(第62回~第65回大会)をはじめ、これまで実に箱根駅伝11回の総合優勝を誇る順天堂大学。1999年からの駒澤大学との「紫紺対決」は、ファンの箱根駅伝への注目度もそれまで以上に高めさせた。
だが“元祖・山の神”今井正人(現トヨタ自動車九州)を擁して総合優勝を果たした2007年以降は、翌年の5区途中棄権を契機に成績が落ち込み始め、2010年からは2年連続で本大会出場を逃すほどに低迷していた。
復活の兆しが見えたのは、2012年の箱根駅伝で本戦復帰を果たしてからだ。7位でシード権を獲得すると、翌年も6位と健闘。その後2014年と2015年はシード権を獲得できなかったが、2016年には再び6位。前回大会は1区15位と出遅れながらも2区から立て直すと、4区と10区で区間賞を獲得して総合4位に入るなど、安定した力を見せるまでになってきている。
31歳という若さで就任した長門俊介監督。
再起の要因のひとつが、2011年からコーチとしてスタッフに加わり、2016年4月に31歳という若さで監督に就任した長門俊介監督の存在である。
箱根駅伝では1年時から4年連続で9区を走り、4年生だった2007年には総合優勝にも貢献した長門監督。順大コーチ就任要請の声がかかったのは、彼がJR東日本に所属して4年目、まだ現役選手として走っている時だった。
「コーチの話があったのは僕も現役を辞めようかどうかと考えていた時でした。元々教員になって指導に携わりたいという考えもあったんです。順大が予選会も通れないくらいに悪い状況だったし、僕自身も学生時代にお世話になっていた(前監督の)仲村明先生が大変だというのもわかっていたので、やれるんだったらやりたいと思いました。当時は低迷していましたけど、逆に考えれば落ちるところまで落ちているのだから『手伝ってもこれ以上悪くはならないだろうな』と。それで思い切って飛び込むことにしたんです」
仲村前監督(現 駅伝コーチ・長距離コーチ)からは「お前は自分にはないものを持っているから」と言われた。
それは大胆な改革ができたり、選手やスタッフに対してもガツガツ意見していけるところだと長門監督は考えていた。