プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ヤスアキジャンプは空気を変える。
稲葉監督と浜スタが待つ絶対守護神。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2017/11/20 13:00
プロ入り1年目から3年連続で50登板を記録している山崎康晃。ヤスアキジャンプはすっかりハマスタの名物だ。
近年、日本はクローザーの人選に苦労してきた。
国際大会のクローザーは過酷である。
北京五輪ではあの岩瀬仁紀投手(中日)が、イ・スンヨプに決勝ホーマーを浴びてもいる。
その重責を誰に委ねるのか。今春のワールド・ベースボール・クラシックでは、小久保裕紀監督は所属チームではクローザーが本職ではない牧田和久投手(西武)にその重責を託した。また'15年のプレミア12ではプロ入り2年目の松井裕樹投手(楽天)を指名したが、準決勝の韓国戦ではやはり先発が本職の則本昂大投手(楽天)を抑えのマウンドに上げている。
過去にも国際試合では、上原浩治投手(カブス)やダルビッシュ有投手(ドジャース)らが、一時的に抑えを任された。彼らが求められたのも、ただ単に9回を0点で抑えて帰ってくることだけではなかった。
最後をきっちりと締めくくって次の戦いへのリズムを作る。だから歴代の指揮官は四球を嫌い、三振を取れる投手を求める。そのために上原にはフォークがあり、ダルビッシュには縦のスライダーという空振りを取れる武器があった。そして山崎にもツーシームという伝家の宝刀がある。
あとはその武器を磨き、五輪という独特なムードの中でも自分の力を発揮できるように心技体を磨き上げることだ。そのための最初の一歩が、今大会でのクローザー指名だった訳である。
2020年の五輪で、野球の会場は横浜スタジアムだ。
おそらく2020年の東京五輪では山崎と松井がクローザーの有力候補になるはずで、もしかしたらダブルストッパー構想も浮上するかもしれない。松井には左という武器がある。そして山崎にはスタジアムのムードを変えられるという独特の力がある。その2人を稲葉監督がどう使いこなし、本番のクローザーを決めていくのか。それもあと3年間での侍ジャパンのテーマであるはずなのだ。
今季の山崎は、シーズン途中でクローザーを外されたこともある。また日本シリーズではあとアウト2つで逆王手という場面で、ソフトバンクの内川聖一外野手に痛恨の同点ホーマーを浴びる経験もした。
「いい経験を積めて、僕の財産になったシーズンでした」
こう語る山崎は続けた。
「世界一のクローザーになりたい。レベルは高いけど、もっともっと力をつけて、強くなれるように頑張ります。何とか2020年のオリンピックでも“ヤスアキジャンプ”をしてもらえるようになりたいし、そのためにもっともっと強くならなければいけない」
2020年の東京大会。野球の会場は「ヤスアキジャンプ」の本拠地・横浜スタジアムである。
舞台もまた、この絶対守護神の登場を待っているのである。