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ヤスアキジャンプは空気を変える。
稲葉監督と浜スタが待つ絶対守護神。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2017/11/20 13:00
プロ入り1年目から3年連続で50登板を記録している山崎康晃。ヤスアキジャンプはすっかりハマスタの名物だ。
“稲葉ジャンプ”の力を知る監督だからこそ。
東京ドームで行われている国際大会だ。本拠地・横浜スタジアムで流れるゾンビ・ネイションの『ケルンクラフト400』が流れるわけではない。しかし球場のファンがハミングでその音楽を奏で「ヤ・ス・ア・キ」と叫んでジャンプを繰り返す。
「曲はなかったものの声援も聞こえてきましたし、力を与えていただきました。素敵なサポーター、スタッフとできて嬉しく思っていますし、この大会を通じて僕自身ももっともっと強いパフォーマンスをできるようになっていかないといけないと改めて思いました」
侍ジャパンのクローザー・山崎康晃投手(DeNA)は、改めて2020年に向けた決意を語った。
自身も現役時代に“稲葉ジャンプ”でスタンドを巻き込み、それを自分の力としてきた稲葉篤紀監督だからこそ、山崎の存在感には特別な思いがある。
「山崎選手がでればみんながジャンプをするのは分かっている。球場の雰囲気が変わってくれないかな、と。僕のときも“稲葉ジャンプ”で球場の雰囲気、空気を変えてくれた」
7-0でも、山崎をマウンドに送り出した理由。
この大会で侍ジャパンのクローザーを任された山崎にも、絶対守護神に不可欠な、そんなスタジアムの空気を変えられる力がある。
初戦の韓国戦でも、1点を追う9回表に山崎をマウンドに送り、三者凡退で裏の攻撃に繋げたのが、9回裏の同点劇、その後のタイブレークでのサヨナラ勝利への布石となっている。
決勝進出を決めた前日の台湾戦後に、投手陣をあずかる建山義紀投手コーチも決勝の起用法でこんなことを語っていた。
「明日は4つのアウトとか回跨ぎで使うケースも考えています。それともし追いかけるような展開になっても、試合の流れを変えるために使うこともある」
7-0。結果的にはセーブもつかない大勝の場面だった。だが、あえて稲葉監督は山崎をマウンドに送り出した。その背景には、そういう力を持つ右腕を侍ジャパンの最後を締めくくる投手として育てる、という強い意志が込められているように見えた。