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酒場のオヤジが共感する小林誠司。
続く若手扱い、捕手2人指名の悲哀。
text by

中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKyodo News
posted2017/11/09 10:30

オフに30億円とも言われる大型補強をしたはずなのだが、CS進出を逃した巨人。小林の試練は続くのか……。
巨人で“若手の役割”を全て引き受けている男。
巨人ではキャプテン坂本勇人と小林以外にレギュラーとして試合に出続けている20代野手がいないから、あらゆる批判が背番号22に集中する。
東京ドームの大観衆の目が光る賛否のステージに上がれないまま消えて行く選手も多い中で、一身に“若手の役割”を引き受けた男――。
昨年のとあるコラムで「だいたい小林は正捕手になれなきゃ死ぬみたいな雰囲気だけど、別に将来的に打撃力のある捕手との併用で第2捕手としてでもチームの戦力になれればいいと思う。背番号22の成長に必要なのは、経験と同時に負担をワリカンできる同年代のライバルである」と書いたのをよく覚えている。
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そして今春にはWBCで侍ジャパンの正捕手として打率.450と大活躍、世界のコバちゃん旋風を巻き起こした。
レギュラーシーズンでも自己最多の138試合出場。
守備面では強肩を武器に盗塁阻止率.380を記録し2年連続のリーグ1位。
一方で打撃では規定打席に到達した打者の中では、12球団最下位の打率.206。それでも大エースに成長した菅野とのスガコバコンビで最優秀バッテリー賞を獲得。
プロ4年目でようやくポジションを掴んだ……と思ったら、夏場に宇佐見という年下の“打てる捕手”が台頭し、ドラフトで21歳の岸田、24歳の大城の指名と来たもんだ。
「小林に一定の目処がついた」からこその捕手指名。
社会人捕手の連続上位指名は小林誠司が物足りないから?
確かに一部評論家が指摘するようにそれはあるだろう。
だが、同時にこうも言えるのではないか。「小林に一定の目処がついたから、巨人は捕手再編成に踏み切れた」と。
打率.350、4本塁打の打撃成績を残した宇佐見にしても今季出場わずか21試合、もちろん社会人出身と言っても岸田や大城もプロではまだ未知数だ。それなのに、引退の相川に続き實松までリリースした。要は安心ベテラン保険を切ったわけだ。なぜって、今の小林なら彼らの役割もできると踏んだから。