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酒場のオヤジが共感する小林誠司。
続く若手扱い、捕手2人指名の悲哀。
text by

中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKyodo News
posted2017/11/09 10:30

オフに30億円とも言われる大型補強をしたはずなのだが、CS進出を逃した巨人。小林の試練は続くのか……。
「おまえばまだ若い」と、ただただこき使われる日々。
「こいつらは俺より先を行っているかもしれません。でも俺より上に行ってるわけじゃない」
漫画『アオイホノオ』で主人公の焔燃(ホノオ モユル)はそう言って無力な自分自身を正当化し鼓舞する。
なぜなら、そうでも思わなきゃやってられないから。
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同年代のキュートな女子のように「若いから」とおじさんに大事にされることもなければ、逆に「おまえはまだ若い」とオヤジ達からこき使われる日々。上司はうるさいし、残業も多い。時代遅れの先輩は「坊主になれ」とか言ってくる。
ちきしょうこんな会社やめてやる。
いや逃げるわけにはいかない。
よし、男は黙ってキャッチャーマスク……みたいなあの感じ。
会社で言えば、大きな部署でただ1人の若手という立場。
思えば、小林は2013年ドラ1でプロ入り以来ずっとハードな環境でサバイバルしてきた。
周囲からは“ポスト阿部慎之助”という、選手のタイプを考えたら無茶ぶりとも思える期待を受け、時に打撃やリードをボロクソに言われながらも1年目の63試合から→70→129→138と地道に年々出場数を増やしてきた。
ちなみに'15年、'16年と巨人は小林以外の20代捕手は1人も一軍でマスクを被っていない。会社で言ったら、部署でたった1人の若手社員として奮闘する日々だ。
なのに2年前には開幕マスクを被り同級生の菅野智之を勝利に導くも、その後チームは失速し、相川も怪我して、一塁転向したはずの阿部が開幕7戦目に電撃捕手復帰なんてこともあった。
俺なら萎える。
「営業部を支えていたアベ先輩が他の部署に移る、その代役はおまえに頼んだ」なんて社長とグータッチしたのに、ほんの数日で「ゴメン、全然ダメ。やっぱあいつを呼び戻すから」と思いきりダメ出し。周囲は次があるさとか慰めてくれるけど、それもまた虚しいもんだ。