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酒場のオヤジが共感する小林誠司。
続く若手扱い、捕手2人指名の悲哀。
text by

中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKyodo News
posted2017/11/09 10:30

オフに30億円とも言われる大型補強をしたはずなのだが、CS進出を逃した巨人。小林の試練は続くのか……。
誰もいなくなり、そして小林だけが残った。
V3時代のツケを払っているかのような、過渡期のチームの急激な捕手の若返りの中心には28歳の小林誠司の存在がある。
不思議なもんだ。
あの頼りなさそうに見えたイケメンが、伸びかけの坊主頭で秋季キャンプ限定のチームキャプテンを務めている。ついこの間まで一軍唯一の若手捕手だったのに、気が付けばチーム最年長捕手だ。
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誰もいなくなり、そして小林だけが残った。
来季はプロ5年目の29歳を迎える背番号22。そして今夜も「ここからだぞ。仕事を任せられるようになってからが本当の勝負の始まりだ」なんつって松坂世代のアラフォー男たちはビール片手に小林を語り合う。俺らにもそんな時代があったよね……となんか懐かしいこの感じ。
“サラリーマンの鑑”と言われた鹿取義隆。
一昔前、巨人戦ナイターが毎晩地上波中継されていた頃、プロ野球チームが会社にたとえられることがよくあった。
例えば、王貞治監督の酷使にも文句を言わずひたすら投げ続けた鹿取義隆を“サラリーマンの鑑”と週刊誌が大々的に取り上げたように。というか、このコラムだってあえてその視点の延長線上で書いた。ちなみに酒席のネタで求められるのはアイドル論にも近い「隙のない完璧さ」よりも「突っ込みどころのある不完全さ」だ。不完全さは時に共感を呼ぶ。例えば、コバちゃんの似合いすぎのサラサラヘアではなく、愛嬌のあるイケメン坊主頭のように。
小林誠司という選手は球場でアイドル的な人気を誇る一方で、酒場のオヤジたちのリアルヒーローでもあるのである。
