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初優勝の瞬間、柿谷の姿はなかった。
セレッソの主将として必要な姿勢は。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2017/11/08 08:00

初優勝の瞬間、柿谷の姿はなかった。セレッソの主将として必要な姿勢は。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

柿谷曜一朗は、セレッソの象徴である。だからこそ、ピッチ内外でチームを引っ張る姿が見たい。

戴冠の瞬間、柿谷曜一朗はピッチにいなかった。

 ところで試合後、選手やスタッフ全員が最高の笑顔を見せているなかで、ひとり浮かない表情の選手がいた。おそらく他の誰よりもこの瞬間を待ちわびていたはずの、柿谷である。

 84分、途中交代でピッチから退いたときには、ベンチには目もくれずロッカールームへと消えていった。試合後、柿谷がその心境を明かした。

「最後までみんなと戦いたかったから、個人的には優勝どうこうよりも、それができなくて自分への不甲斐なさが残る試合でした」

 この試合、柿谷は背番号20のユニホームを下に着てピッチに立っていた。2003年の入団からC大阪ひと筋のチーム最古参、この日ベンチ外だった酒本憲幸のユニホームである。

「シャケさんと一緒に優勝したいという想いを持ちながらやっていて、最後までピッチに立ってシャケさんに見せたかったし、こういうチャンスってあまりないじゃないですか。だから、このチャンスをモノにできなかったという悔いがすごく残ります」

天皇杯が残っていることは、大きな意味を持つ。

 3カ月ほど前、柿谷から聞いた言葉が強く耳に残っている。

「タイトルを獲ったことがないのはすごく悔しいことやけど、じゃあ、たまたま1回獲れればいいのかっていうと、そうじゃない。たまたま獲れたとかでいいなら、毎年チャンスはあると思うけど、一時の喜びや幸せではなくて、ずっと続く喜びをこのチームで味わいたい。僕はセレッソを安定して強いチームにしていきたいと思っているし、そんなチームの中心でいたいと思っているんです」

 信頼する大先輩とともに最後まで戦いたい、優勝が決まった瞬間にそのユニホーム姿を見せて喜びを分かち合いたい、という気持ちはよく分かる。そして、他のどの選手よりも多くの想いを抱えてファイナルのピッチに立っていたということも。

 しかし、それでも悔しさや不甲斐なさをグッと堪え、試合終了の瞬間までベンチからチームメイトを鼓舞することが、クラブのエース番号である8を背負い、キャプテンマークを巻く者に求められる姿ではないだろうか。常勝チームの中心でいるということは、おそらくそういうことだ。

 天皇杯に勝ち残っていること――。それはチームにとっても、柿谷にとっても、大きな意味を持つことだろう。C大阪の選手たち、そしてキャプテンが、そこで何を見せてくれるのか楽しみにしている。

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