Jをめぐる冒険BACK NUMBER
初優勝の瞬間、柿谷の姿はなかった。
セレッソの主将として必要な姿勢は。
posted2017/11/08 08:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
文字どおり、総力戦で掴み取った悲願の初タイトルだった。
どちらが勝っても三大タイトル初優勝となるルヴァンカップ決勝はセレッソ大阪が2-0で川崎フロンターレを下し、キャプテンの柿谷曜一朗によって優勝カップが埼玉スタジアムの空に掲げられた。
今大会のグループステージから決勝までの全13試合で、C大阪は実に33人もの選手をピッチに送り出した。
たしかに、ミッドウイークに試合が組まれることの多いこの大会では、どのチームもリーグ戦とは異なるメンバーを送り出す傾向がある。ましてやノックアウトステージに入ると、インターナショナルマッチウイークと日程が重なるため、日本代表選手は出場できない。
だがそれにしても、これだけの人数が出場したチームはかつてなかっただろう。C大阪の尹晶煥監督はリーグ戦とカップ戦でメンバーを完全に分けて戦った。ターンオーバー制を採用し、Aチームをリーグ戦に、「ルヴァン組」と呼ばれたBチームをカップ戦に送り込んだが、このマネジメントが大きな成果を生んだ。
決勝を前に、チームの選択を迫られた尹晶煥監督。
柿谷や清武弘嗣ら技巧派が揃うAチームに対し、指揮官が求める高い守備意識やハードワークを体現してきたのは、ベテランの茂庭照幸や5年目の秋山大地らが中心となった「ルヴァン組」のほうだった。
グループステージとプレーオフの8試合では、サガン鳥栖との第3戦こそ4-4の打ち合いを演じたが、それ以外の7試合でクリーンシートを成し遂げるなど、堅守速攻の完成度は高かった。
「ルヴァン組」が掴み取ったファイナルへのチケット――。
それゆえ、尹晶煥監督は「今日のメンバーはすごく悩んだ」と苦悩を明かしたが、「タイトルを獲るためには何かを犠牲にしなければならない」と、Aチームをファイナルの舞台に送り出す。
その彼らが「ルヴァン組」に負けないくらい粘り強い守備を見せ、少ないチャンスを得点に結びつける勝負強さを見せたのだ。