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田臥勇太「マイナスは何もない」。
Bリーグ栃木、5連敗も前を向いて。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYuki Suenaga
posted2017/10/27 11:30
勝てない時期が続いても、全力の戦いを続ける。田臥らブレックスの選手たちにできることはそれだけだ。
サポーターグループも葛藤の時を迎えていた。
ブレックスは2010年、当時のJBLで初優勝を飾った後、翌シーズンから3年にわたってプレーオフにも進出できない苦難の時期を過ごした(※東日本大震災でプレーオフが開催されなかった2010-11シーズンは除く)。当時もウィスマンHCが日本代表HCに就任するため、優勝を置き土産にチームを去り、チーム再建を余儀なくされた。
そんな時期を過ごしたからこそ、当時からチームを牽引する田臥にとって今回の挑戦も大きな意味があるのだ。
それは選手だけではない。
熱狂的な応援で知られるブレックスには、チーム公認のサポーターグループである「B-rAids」という団体がある。ブレックスアリーナ周辺の清掃活動をブレックスと共同で行なう「BREX SMILE ACTION」という活動があるのだが、レバンガ北海道や名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、山形ワイヴァンズなども、B-rAidsのそうした活動を参考にしている。
代表を務める荻島正人は、初優勝後の苦しい時期をこう振り返る。
「B-rAidsしか声を出していないんじゃないか、という会場の雰囲気はありましたね……」
「今の雰囲気は栃木ファン一人ひとりの意識の高さ」
彼らが結成したのは2008年、当時のJBLの2部から1部に上がるタイミングだった。しかし、2010年の優勝の次のシーズンから様々な事情が絡み合い、B-rAidsのメンバーでも応援に来る人数が極端に減った時期があった。
苦難を乗り越えなければいけなかったのは、選手だけではなかったのだ。
今年5月、Bリーグ優勝が決まった直後に萩島の目から自然と涙があふれたのは、彼らも苦しんだ時期があったからだった。
「あの3年間があったからこそ、ブレックスの1回目の優勝と、昨シーズンの優勝は全然違うものを感じました。やっぱり頭のなかに浮かんできたのは、勝てなかったあの時期のことで。静かな会場のなかで、自分たちだけしか声を出していない、あの雰囲気が……」
彼らは他チームの模範となりながら、応援は強要するものではない、というスタンスは変えない。
萩島は謙遜して、こう答える。
「今の雰囲気は栃木ファン一人ひとりの意識の高さだと思うんです。僕らは第一声しか声を出していないんですけど、あとに続く人がいなかったら、応援にはつながらないと思う。そこで声をつなげてくれるのは栃木ファンの意識の高さであり、チーム愛だと思うんですよ」
もちろん、“第一声”に魂を込める覚悟はゆるがない。
「選手たちはどうやって勝利につなげようか考えていると思うんですけど、その背中を押せるのは、僕らしかいないと思っているので」