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田臥勇太「マイナスは何もない」。
Bリーグ栃木、5連敗も前を向いて。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYuki Suenaga
posted2017/10/27 11:30
勝てない時期が続いても、全力の戦いを続ける。田臥らブレックスの選手たちにできることはそれだけだ。
“ブレックスがみなさんの心に根付いている”
萩島は、開幕戦で思わぬ声を聞いたという。
「昨シーズンまで須田侑太郎を応援するためにブレアリに来ていた東京在住の方と、ブレアリの開幕戦でお会いしたんですけど……」
前述した通り、須田は琉球に移籍した。もうブレアリでは会えないと思っていたファンの人はこう話した。
「ここに通っているうちにブレックスが好きになっちゃったんです」
荻島は顔をほころばせて、こう話す。
「栃木の人たちは、もちろん大事です。ただ、栃木以外からもそうやって集まってくれるというのは“ああ、ブレックスがみなさんの心に根付いているんだな”と感じて、本当にありがたいですよね」
10年間かけて築いたファンの存在とともに。
栃木ブレックスはブレックスアリーナがある宇都宮市を本拠地にしながら、鹿沼市、小山市、大田原市でも、各2試合ほど行なっている。筆者は全会場に足を運んだが、どの会場でもブレックスファンの応援は、リーグの中で抜きん出たものだとわかる。
それでもなお、ブレックスアリーナの熱は飛び抜けている。正方形に近い構造で、人が密集している。その空気は相手チームを押しつぶし、ブレックスの背中を押す、他にはないものだと断言できる。
20点差が10点差に縮まっただけで、同点に追いついたかのようかのように熱狂し、アリーナの空気を揺らせるのは、現時点ではブレックスのファンだけだ。
今のブレックスは岐路に立たされている。チームはこれまで積み上げてきたものの一部を取り壊し、新たなものを積み上げていく最中だ。苦難は伴うし、忍耐力が必要になってくる。
その支えとなるのは、チームが発足した2007年から10年間をかけて築いてきたファンの存在以外にありえない。
ブレックスアリーナでの試合なら、ファンの力で10点分は上乗せしてみせる。
そんな存在になれるかどうか。この危機を乗り越えるための着火点となるのは、コートの上ではなく、コートを取り巻くファンの存在なのかもしれない。
これまでもそうだったように。