プロ野球亭日乗BACK NUMBER
広島の手堅さか、DeNAの強攻策か。
2番打者を巡る価値観対決、軍配は?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2017/10/18 12:15
ラミレス監督が求める攻撃的2番打者像を体現する梶谷隆幸。三振も多いが、爆発力は目を見張るものがある。
昨年は理想を放棄してしまった。今年は――
結果的に初戦を落としたラミレス監督は、ここで梶谷を2番から外して攻撃的2番を諦めた。2、3戦目は2番に石川雄洋内野手を起用して、第3戦の無死二塁の場面では手堅く送りバントを命じている。
それは理想の放棄だった。
しかし結果的には、理想の放棄は自分たちの野球をも見失うことに繋がった。
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だからこそ今年はファイナルステージ進出をかけた勝負の第3戦で、いきなり仕掛けた。短期決戦でも最後は自分たちの野球を貫く――。それがラミレス監督の結論だったわけだ。
広島・緒方監督「短期決戦では普段と違う戦い方も」
一方、昨年の広島も2番・菊池涼介内野手が機能することで、試合の序盤はバントではなくヒットエンドランを仕掛けるなど、攻撃的野球を見せるチームだった。昨年のファイナル初戦でも緒方孝市監督は、ラミレス監督と同じように1回に攻撃的采配を見せた。
DeNAが無得点に終わったその裏の赤ヘルの攻撃だ。先頭の田中が左翼線に二塁打を放つと、赤ヘルの指揮官は2番の菊池にヒッティングのサインを送った。結果はフルカウントから見逃しの三振で走者を進めることができず、この回は先制点を奪えなかった。
すると、緒方監督はスイッチを切り替えた。
続く3回に再び先頭の田中が四球で歩くと、今度はすかさず菊池に送らせる。そこで3番・丸佳浩外野手と4番・新井貴浩内野手の連続適時打が飛び出して2点を先制。結果的には9安打5点を挙げての圧勝スタートとなったのである。
しかも緒方監督はその後も徹底して手堅い采配を続け、チームを日本シリーズへと導いた。
ファイナルステージの2戦目以降、3試合で先頭打者が出塁した9度のケースで、6回送りバントを選択している。強攻した3度はいずれも日本シリーズに王手をかけた第3戦。先々の戦いを睨んでシーズン中のスタイルの可能性を模索したが、いずれも失敗に終わると、第4戦では無死で走者を出した4度のケースで、3回送りバントをさせている。
「シーズン中には状況に応じてエンドランなど色々なケースを想定しているが、やはり短期決戦では普段と違う戦い方も必要だと思う」