野球のぼせもんBACK NUMBER
井口資仁は王貞治元監督の志を継ぐ。
行く先々で優勝し続けた男の本質。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/10/11 08:00
1996年、ダイエーへの入団発表後に、当時の王監督と写真撮影に応じた井口。
「トリプルスリーもいいけど『40本塁打・40盗塁』を」
また、この年は42盗塁で自身2度目の盗塁王を獲得した。
当時、井口はこんなことを言っていた。
「40本塁打、40盗塁の『フォーティ・フォーティ』をやってみたい。トリプルスリーもいいけど、『40-40』は日本ではまだ誰も達成したことのない記録ですから」
井口はバッティング以外にも走ること、守ることにも強いこだわりを持っていた。
'01年にも30本塁打、44盗塁(リーグ1位)と成績を伸ばしたことがあったが、この年は守備位置がショートからセカンドへコンバートされたシーズンだった。これも結果としては「当たり」だった。
王貞治監督は、常に「変化」を唱えた指導者だった。
プロ野球選手に限らず、誰しも人生の歩みに変化をつけることは容易ではない。
しかし、井口に限らず当時のホークスの選手たちは、常に「変化」を求める姿勢を示していた。
「現状維持ではダメなんだ。たとえ良かった年でも、変化をしなければ、この世界で長く生きていくことはできない」
それを力強く、いつも唱えていたのが、当時ホークスを率いた王貞治監督だった。
「喜びというのは瞬間でしかない。記録ってのは積み重ねでしょ。周りの人たちはワーッとなるけど本人の受け止め方は違うんです。次打つためにどうするか。ファンが喜んでいるのを見て、瞬間的にホッとはします。でも、結果を出せば研究されるわけだから、それに打ち勝つには余韻に浸っている暇なんてない。シーズンが終わった時、どのくらい楽しめたかな。もって数日ですよ。すぐ来シーズンはどうしよう、となる」