JリーグPRESSBACK NUMBER
ACL上海戦は、楽しい試合になる。
浦和にピッチで見せてほしい「勇気」。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2017/09/27 07:00
浦和レッズは今もダントツでJリーグ最多の観客を集めるチームである。スタジアムで観戦する彼らを失望させてはいけないのだ。
僕はこのペトロビッチという監督が好きだった。
その後半立ち上がり直後、交代で投入された3選手の1人、那須大亮がいきなり肉離れで負傷退場する。当たり前だが、もう交代枠は残っていない。レッズは残りの40分あまりを8人のフィールドプレーヤーで戦い、何度かゴールチャンスは作ったものの、結局終了間際にもう1点を追加され0-2の敗北を喫した。
20試合を終えた時点で9敗、レッズはシーズン半ば過ぎにしてすでに27もの勝ち点を失ってしまっていた。翌日、クラブは監督の契約解除を発表する。2012年シーズンからチームの指揮を取ってきたセルビア人監督の時代は、こうして終わった。
クラブの判断は100%正しかったが、やはり残念な出来事だった。少しだけセンチメンタルなことを書かせてもらうと、僕はこのペトロビッチという監督が基本的に好きだった。彼は不思議で(時にストレスフルなこともあったが)、奇妙で、攻撃的なサッカーを志向し、サッカーに対して1つの哲学を持っていた。人間的にはとても暖かな人だった(少なくとも僕にとってはそういう人だった)。
タイトルに縁のない監督と就任当初から揶揄され、実際この5年半で浦和に彼がもたらしたのは昨シーズンのルヴァンカップだけだったが、僕は彼が彼のサッカーを貫き通すことで彼自身の壁を突き破ってもらいたかった。そして、これは想像でしかないけれど、ペトロビッチとの契約にこだわり続けた浦和レッズのフロントも、同じような願いを抱いていたのではないだろうか。
堀監督にかわり、内容も徐々に安定してきた。
しかし浦和レッズは彼と共に栄光を手にすることは叶わなかった。
セルビア人が去った後、新たに監督に就任したのは堀孝史コーチだ。ユース世代の監督として、あるいはアシスタントコーチとして、相当に長い時間を浦和レッズとともに過ごしてきた人物である。
4-1-4-1のフォーメーションを好む新監督は、まず守備を整備し、前監督の下でほぼ決まりきっていた選手起用のローテーションを一度シャッフルした。矢島慎也、高木俊幸、あるいは長澤和輝という若い選手にチャンスを与え、前線に傾きすぎていたバランスを後ろに戻し、守備の中心には新加入のブラジル人マウリシオを据えた。
就任後の成績は、J1、ルヴァンカップ、天皇杯、ACL、スルガ銀行チャンピオンシップを戦って、13戦5勝5分3敗。劇的な回復を遂げたわけでもないが、内容的には徐々に安定感を取り戻し始めた。南米代表のシャペコエンセに勝ってタイトルのようなタイトルでないようなタイトルを取り、ルヴァンカップと天皇杯を落とし、残るは今日、9月27日に準決勝ファーストレグが行われるACLだけとなった。