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ACL上海戦は、楽しい試合になる。
浦和にピッチで見せてほしい「勇気」。 

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近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

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photograph byAtsushi Kondo

posted2017/09/27 07:00

ACL上海戦は、楽しい試合になる。浦和にピッチで見せてほしい「勇気」。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

浦和レッズは今もダントツでJリーグ最多の観客を集めるチームである。スタジアムで観戦する彼らを失望させてはいけないのだ。

リーグで調子が出ないチームが、カップ戦で。

 リーグでは全く調子の出ないチームが、なぜかカップ戦や国際大会では結果を残す。サッカーの世界では比較的よく起こる現象だが、今季のACLにおけるレッズはまさにこれに当てはまる。

 まずグループステージでは、FCソウル、上海上港、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズという「死のグループ」に入ったものの、4勝2敗という好成績で突破した。

 ベスト16では済州ユナイテッドFCを相手に、ファーストレグを0-2というスコアで落とした後、セカンドレグでは3-0の逆転劇を演じて見せた。

 続くベスト8では同じく日本代表の川崎フロンターレと戦い、ファーストレグはアウェーの試合を1-3、完敗という形容詞以外思いつかないような内容で落としたものの、3週間後のセカンドレグでは4-1で勝利し、ベスト4への進出を決めた。

人間は利益よりも損失に敏感に反応する?

 ただ、埼玉スタジアムで行われたこの第2戦は、ある意味で川崎フロンターレの自損事故のような試合だった。前半、先制点を奪ったのは川崎の方だ。決めたのはエウシーニョだが、右サイドでの彼の抜け出しに魔法のようなダイレクトパスを出したのは、全ての意味においてチームの支柱である中村憲剛だった。浦和レッズがやられるときは、いつもこの選手にやられる。

 ところが川崎フロンターレは、前半38分に車屋紳太郎が退場になると、4分後に何とその中村憲剛を下げ、守備もできる田坂祐介を投入した。フロンターレサポーターの何割かはマジで? と首を傾げた。レッズサポーターの9割はマジか! と喜んだ。彼がピッチを後にした瞬間、スタジアムには、もしかしてもしかするかも、という強い空気のうねりが生まれた。

 2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士は、プロスペクト理論で人間のこんな心理を説明している。

「人間は利益を得られる場面ではリスク回避を優先し、損失をこうむる場面では損失を回避する」

 要は、一度手に入れたものを失うのはとんでもなく怖いということだ。結果論といえば結果論だが、あのとき川崎にとって最も合理的な選択はもう1点を奪うことで浦和の希望を完全に断つことだった。しかし、彼らはより大きな損失を避ける、つまり最低限の失点で逃げ切ることを選んでしまった。

【次ページ】 なんでこういうゲームがリーグ戦でできないのだろう。

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