フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ネイマールがきっかけとなった、
世界的移籍金バブルの裏側。
text by
ロベルト・ノタリアニ&パトリック・ソウデンRoberto Notarianni et Patrick Sowden
photograph byRichard Martin
posted2017/09/19 07:00
PSGサポーターの前で移籍の挨拶をするネイマール。彼が、移籍金の狂乱市場を生み出した張本人である。
18歳の若者に1億5000万ユーロがつく異常な時代。
「来年、記録がさらに塗り替えられても驚かない」と語るのは、著名なエージェントのジョバンニ・ブランキーニである。
「ネイマールで明らかになったように、スポーツ的な側面は移籍の1要素でしかない。クラブの野心――ときに国家の後押しを受けた――が、超高額移籍をこれからも可能にしていくだろう」
エコノミストのヴァンサン・クローデルが補足する。
「複数の要素が絡み合ってこのトレンドが生まれた。世界的なテレビ放映権の高騰とビッグクラブの予算の増加、選手に対する需要の増大……。中国やトルコといった国々のクラブもトップ選手の獲得競争に加わり、価格上昇に一役買っている事実も無視できない。
私が最も強調したいのが需要の増加だ。
ムバッペの例を考えればいい。わずか18歳の若者に1億5000万ユーロの値をつけるのは馬鹿げている。しかし彼が抜けた穴をライバルが簡単に埋められないような状況では、値段が下がることは決してない」
つまりインフレは沈静化しない。
「多くの選手が過大評価されるようになった」
リモージュ大学スポーツ法律経済センターの経済研究主任であるクリストフ・ルプティが語る。
「この夏の巨額移籍はすべての移籍価格を高騰させた。その結果として、多くの選手が過大評価されるようになった」
エバートンがそのいい例であるという。彼らはこの夏、ロメル・ルカクをマンチェスター・ユナイテッドに売る(ボーナス抜きで8480万ユーロ)ことでジャックポットを引き当てた。それによりエバートンは、他のプレミアクラブにとって気前のいい顧客になったのだった。
金なら十分にある。売り手としては、多少値引きしてでも買ってもらうに越したことはない。
こうしておよそ5000万ユーロで、スウォンジーからアイスランド代表のストライカー、ギルフィ・シグルズソンがエバートンに買われた。エバートンにとっては、クラブ史上初の北欧出身選手である。