フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ネイマールがきっかけとなった、
世界的移籍金バブルの裏側。
text by
ロベルト・ノタリアニ&パトリック・ソウデンRoberto Notarianni et Patrick Sowden
photograph byRichard Martin
posted2017/09/19 07:00
PSGサポーターの前で移籍の挨拶をするネイマール。彼が、移籍金の狂乱市場を生み出した張本人である。
「クラブ史上最高額の移籍」がやたらと増えた今季。
ある者たちはこの結果に安堵のため息をついた。彼らにとってこの額は極めて妥当であったからだ。こうしてデンベレは、リーガ史上最高額の移籍金(それまでの記録は2013年のギャレス・ベイルがトットナムからレアル・マドリーに移籍した際の1億80万ユーロ)でバルセロナに移っていったのだった。
「ネイマールの違約金支払いが引き金となって、どのクラブも自らのクラブ史上最高額で選手を獲得する傾向が一気に加速化した」と、バルサの新監督に就任したエルネスト・バルベルデは記者会見で語り、自分たちだけが高額移籍の当事者でないことを強調した。
とはいえバルベルデにしても、この夏の選手移籍の総額が、ここまで膨大になるとは想像できなかったのではないだろうか。
ネイマール、デンベレに加え、1億8000万ユーロが支払われたキリアン・ムバッペの移籍もあり、この夏に5大リーグで動いた移籍金は総額37億ユーロを超える。市場が締め切られる8月31日を過ぎるころには40億ユーロに迫っているだろう。
かつてないことで、とりわけ2億2200万ユーロでバルセロナからパリ・サンジェルマン(PSG)に移籍したネイマールは、あらゆる記録を塗り替えた。
年々記録が更新されている狂乱の移籍金市場。
それはそれまでの記録であったポール・ポグバ(2016年にユベントスからマンチェスター・ユナイテッドへ1億500万ユーロで移籍)の2倍以上であり、ブラジル人選手としても最高額(記録は2009年にミランからレアル・マドリーに移籍したカカの6720万ユーロ/ネイマール本人のサントスからの移籍金は確定不能として)、またリーグアンの記録(2013年にナポリから6400万ユーロでPSGに移籍したエディンソン・カバーニ)も大幅に上回った。
違約金の支払いでいえば、これまでの最高額は2016年にゴンサロ・イグアインがナポリからユベントスに移籍した際の9000万ユーロだった。
その前がカバーニであり、さらにその前は2000年にバルサからレアルに移ったルイス・フィーゴが6260万ユーロである。
フィーゴの記録をカバーニが破るまで13年かかったのに対し、イグアインがカバーニを追い越すまで3年しかかからなかった。そのイグアインの記録は、わずか12カ月で破られた。記録更新のスパンも、等比級数的に短くなっている。