ぶら野球BACK NUMBER
信長と山崎武司とおろしかつ丼。
岐阜→大阪連戦という野球観戦の妙。
posted2017/08/17 11:00
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Yasutaka Nakamizo
今の広島カープを見ていると原巨人時代を思い出す。
全盛期の主力選手たちがチームのベースを作り、ベテランや助っ人も働いて、勝利を重ねる内に新しい若い選手たちも引っ張られるように活躍する。日本一に輝いた'09年の巨人で言ったら、小笠原道大やアレックス・ラミレス、キャッチャー阿部慎之助がいたチームで坂本勇人、亀井善行(当時は義行)、松本哲也らが出て来たあの感じ。打つ手打つ手がいい方に回っていく。やはりプロスポーツにおいて「勝つ」というのは何よりもデカい。勝利は選手の自信となり、観客を球場に呼ぶ。「勝つことが最大のファンサービス」というのは、ある意味正しいと思う。
正直、年間数十試合を東京ドームで観戦していると、勝敗には鈍感になってくる。なぜなら今日負けても、明日またドームに来ればいいからだ。いわば今日の負けは明日の試合で取り返せる。
けど、年に1度の地方開催試合だとこういうわけにはいかない。
1日限定のお祭り。今日負けたら、そのリベンジの機会は1年後だ。だから、観客はまるでポストシーズンのようなテンションで選手たちに声援を送る。
自然溢れるのどかな景色とヒリヒリした勝負論――そんな地方球場の雰囲気が大好きだ。だから、俺は今日も新幹線に乗ってぶらりプロ野球を観に行く。
見渡す限り信長がいる異様な風景。
世の中には、その地に自ら足を踏み入れないと気付かないことも多い。
テレビやネットで見られるのは「情報」であって、「風景」ではないからだ。
7月25日、長良川球場で開催される巨人vs.広島戦を追いかけてJR岐阜駅に降り立った。そしたら、いきなりドーンと「信長公のおもてなしが息づく戦国城下町・岐阜」、「2017年 織田信長公 岐阜入城・岐阜命名450年」といった巨大フラッグがお出迎え。
“岐阜=信長”という情報はあっても、実際にこの目で風景を確認すると圧倒されてしまう。なにせ街中、信長だらけだ。
駅に信長、銀行の看板に信長、バスの車内も信長、振り向けば信長、隙あらば信長、信長、信長、巨人の代走、それ重信……なんつってバスに揺られること二十数分、岐阜メモリアルセンターに到着した。