ぶら野球BACK NUMBER
信長と山崎武司とおろしかつ丼。
岐阜→大阪連戦という野球観戦の妙。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2017/08/17 11:00
美味しい食べ物が、人生における大きな決断を左右することがある……大学進学もそう、巨人・畠に対する思いにしてもそう。
天気は悪かったが……長良川球場を満喫した。
立派な陸上トラックがあって、サッカー場もある総合スポーツ施設。その一角に、試合が行われる長良川球場はある。
小雨がぱらついているが試合はできそうだ。入場してまず目に飛び込んできたのが、メットライフドームのようにスタンドから見える位置に設置されているブルペンで、本日先発のマイコラスが黙々と投げ込んでいる。
5800円のバックネット裏指定席Sに向かう途中、ビールの売り子とすれ違ったらビールサーバーではなく、ビール缶を20本以上肩から下げるというド根性の売り方だ。その体力に感心していると、スタンドの向こう側に金華山とかすかに岐阜城らしき建物も確認できた。晴れていたらもっとはっきりと見えていただろうに残念だな……と若干ヘコみながら席についたら、おっちゃんのやたらとデカい話し声が聞こえてくる。
ああっ、ついてねぇ。
酔っ払ってるのかな?
試合中に絡まれなければいいけどなぁ……と恐る恐る右横をチラ見したら、なんとその声の主は山崎武司だった。
席の隣になんと即席のラジオ中継ブースが……。
ええっ、本物のジャイアン?
なんで、ここに? よく見たらバックネット裏の最上段に運動会のような白いテントを張り、即席の放送ブースができあがっている。
どうやらニッポン放送の『ショウアップナイター』ラジオブースのようだ。
客席の一角からの生中継。歓声に負けじと実況・師岡正雄氏と解説・山崎武司氏は大声で喋り続けている。
風はほとんどなく、蒸し風呂のような状況でもちろんふたりとも汗だくだ。
名古屋から電車で30分弱の岐阜において、元中日の主砲山崎人気は高い。気が付けば、ファンもスマホでその姿を撮影しようと賑わっている。
球場内に響くBGMはセンチメンタル・バスの『Sunny Day Sunday』やApollo440の『Stop the Rock』といった懐メロで、この風景と妙にマッチしてノスタルジックな気持ちにさせてくれる。隣の放送テントからは「2番マギーは29打数13安打の打率.448」なんてミニ情報が流れてきて、それを肴に冷えたコーラ片手にグラウンドを見つめた。
マジで贅沢な野球観戦だ。
だが、試合は皮肉にもその二塁マギーの拙守をきっかけに1-2で敗れてしまった。首位広島とのゲーム差は……ってもはや確認する気にもなれない。