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いわきFCに続く筑波大の野心って?
天皇杯躍進とともにスポーツ革新を。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byKyodo News
posted2017/07/27 17:30
Jリーグ勢をなぎ倒しているサッカー部。彼らの躍進は筑波大の今を象徴するのもかもしれない。
学生たちの福祉をいかに充実させていくか。
筑波大学の永田学長が一例を挙げながら語ってくれたのは、学生たちの福祉をいかに充実させていくかという教育環境のさらなる改善についてだった。
「メンタルの問題って、誰が陥ったとしても、おかしくないですよね。これが欧米ですと、気軽に専門家に相談できます。アメリカの大統領には、複数のサイコロジスト(心理学者/精神分析医)が付いているほどです。骨折したら、すぐに治療を受けるでしょ? 同じようなメンタルのケアが、やがて日本でも当たり前になる。当面は安全に、そして安心して取り組めるように整えていく大学スポーツの改革が、一般の学生の福祉もしっかりマネジメントできるようになる学内の意識改革にも繋がっていくだろうと、我々は期待しているわけです」
時代錯誤の旧弊が、いまだにまかり通っているという、そんな話でもあるだろう。安田代表取締役の招聘で加速していくドームとの協働は、まずは旧弊による歪みが軋(きし)みを生じさせている体育会運動部にメスを入れ、次は大学全般を、やがてはこの社会を、永田学長の言葉を借りれば「快適に」していこうというイノベーティブな試みなのだ。想像はこう膨らむ。正当な根拠のない偏見や固定観念による歪みや軋みを教育機関から取り除いていけば、もっと暮らしやすく、生きやすい、つまりは豊かな世の中になっていくはずだと。
あらゆるリスクを管理して、大学スポーツの産業化を。
筑波大学が8月1日付けで新設する「アスレチックデパートメント設置準備室」のトップに、ドームの安田代表取締役を迎えるという今回の発表は、変革進展への期待を一気に高めるものだ。体育会運動部でこれまで野放しにされてきた健康リスクと会計リスク、さらには法的リスクを大学側が徹底管理し、コンプライアンスを十分に浸透させていくには、専門部局の新設だけでなく、旧弊や、その背後にあるしがらみを断ち切れる剛腕が必要となる。
大学スポーツの産業化も、筑波大学は視野に入れている。その意味でもスポーツビジネスの掛け値なしのエキスパートであり、永田学長に言わせれば「餅は餅屋」の安田こそたしかに最適任者に違いない。