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いわきFCに続く筑波大の野心って?
天皇杯躍進とともにスポーツ革新を。
posted2017/07/27 17:30
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph by
Kyodo News
見据えているのは“一点突破”。
筑波大学と株式会社ドームががっちりとスクラムを組む産学連携は、旧弊でがんじがらめになった大学スポーツの世界に、突破口を開くための"協働戦線"だ。
特大の驚きは、筑波大学による学内スポーツ改革の陣頭指揮を、ドームの安田秀一代表取締役が執るという事実。7月27日に公式発表された。アメリカの大手スポーツ用品ブランド「アンダーアーマー」日本総代理店として知られるドームは、実はスポーツを通じた“世直し”を強力に推進するリーディングカンパニーでもあり、カリスマティックなその牽引車こそ安田なのだ。
筑波大学の永田恭介学長は、大好きだと言うサッカーの実例で、人事の重要性を説く。
「うちのサッカー部が2部に落ちたのは、風間さんを失ってからでした。そこから這い上がり、インカレで優勝できた。小井土さんのおかげです」
サッカー部は天皇杯でJクラブを3連破した。
筑波大学蹴球部が関東大学リーグ1部から史上初めて降格したのは、風間八宏(現名古屋グランパス監督)の川崎フロンターレへの転出という優れた指導者の人材流出が一因だったと考えられる。2015年は2部での戦いを強いられた。それが2016年は、返り咲いた1部でいきなり2位に食い込み、全日本大学サッカー選手権(インカレ)を制してみせる。風間からひとり挟んで監督に就任した小井土正亮の下で競争力を高め、今年は周知の通り、天皇杯でJリーグ勢を3連破して、大きな注目を集めている。
ドームが仕掛けるいわば一点突破型のイノベーションは、筑波大学が先陣を切る大学スポーツの改革だけではない。スポーツを通じた地方創生を使命とする「いわきFC」も、ドームの全面支援を受けてフロンティアを開拓するパイオニアなのだ。
「筑波」と「いわき」の共通点は、昨今の天皇杯での躍進だけではない。スポーツを活用した大学と地方のイノベーション、つまりは社会的な革新を率先垂範する二つのモデルでもある。日本のサッカー選手のフィジカルスタンダードを高めていくという、本質を突き詰める挑戦でも認知度を上げる「いわき」が生み出そうとしているのは活気に満ち溢れた街。それでは「筑波」が大きな一歩を踏み出した未来は、何がどう変わっているのか――。