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大学No.1GK、日本人守護神に警鐘!?
卒論に選んだのは「韓国人GK論」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/07/24 08:00
ハリルホジッチ代表監督が求める「身長が190cm以上あるGK」の条件を満たす永石。次代の代表守護神としての期待がかかる。
191cmの日本人GKから見た、韓国人GKの強みとは?
「韓国人GKで印象的だったのは……例えば“クロスに対してそんなに無理をしないんだな”ということ。
無理にキャッチしにいかない。シンプルに弾くことに徹している。それはセレッソで実際にキム・ジンヒョン選手と一緒に練習をして感じたことでもあります。
ただ、無理はしないけど、ハイボールを処理するポイントがもともと高いので、非常に早い段階で弾く、弾けないという判断ができている、ということなんですけどね」
こういった分析をするだけなら、もっと高度な技術を持った専門家はいるだろう。だた彼は、「客観的な分析データを、実際に自分のプレーに転換させる」という重要なタスクも同時に行っている「才能ある現役選手」だからこそ面白いのだ。
「僕の身長は191cmだし、フィジカルも他の日本人選手よりあると思っている……だからこそ、高身長が多いとされる韓国人GKの良さを取り入れることが可能だし、その上で日本人GKの良さである俊敏性やキックの精度も持っているので、両方を足すことでより成長できるんじゃないかな、と思っています。
よく『日本人は日本人の良さで勝負する』という言葉を耳にしますが、そこにこだわりすぎてもダメだと思う。韓国人GKの良いものは積極的に取り入れないと、いつまで経っても日本人GKが存在感を出せないですからね」
この言葉を証明してみせたのが、筆者が取材に行った7月9日の総理大臣杯九州予選準決勝・宮崎産業経営大学戦だ。
分析を自分のプレーへとキッチリ反映してみせた。
この試合に勝てば、9月の総理大臣杯出場権を掴める重要な一戦で、彼は2つのスーパープレーをやってのけた。
前半立ち上がり、左サイドから仕掛けてきた相手MFが逆サイドネットを目掛けて強烈なシュートを放った。ボールはライナーで狙い通りのコースを辿り、得点もやむなしに見えた。だが永石は前述した「面」を作りつつ、力を抜いた状態で対応し、見事にゴール外に弾き出した。
「シュートコースを見て、キャッチは無理だとすぐに分かりました。そこから弾きにいって……手首を動かすとボールの威力があるのでそのままゴールに入るか、ポストに当たってセカンドを詰められると思ったんです。なので、ベストな選択は『指を添える』ことだと。そっとボールに触れて、ポストからも外すことをイメージして手を出したんです」
もう1本は後半に訪れた。右サイドを突破してきた相手MFがフリーで強烈なシュートを放った時だ。
「キャッチするのが難しいボール。でも、すぐ目の前までFWが詰めて来るのが見えたので、前半のプレーの逆でした。身体に近い位置に飛んで来たボールだったので、ゴールマウスの外や上に弾くのは無理。なので、弾くボールをゆっくり浮かせて返すようにすることで、自分がもう一度面を作り直してブロックしにいける時間を作ろうと思ったんです」
強烈なシュートに対してボールを浮かせるように弾くことで、詰めに来たFWがセカンドボールに触れられるようになるまでの時間を稼ぐことができた。結果、相手が再びシュートを打つ瞬間には、永石がすでに面を作り直してシュートコースを完全に消していたのだ。
「2つとも“コントロールする弾き方”ができました(笑)」
試合後、自画自賛したこの2つのビッグプレーは、まさに韓国人GKが得意とするプレーだった。結局、このプレーによりチームは2-0の勝利を掴みとった。