JリーグPRESSBACK NUMBER
柏木「うちは引いて守るのが苦手」
浦和の守備崩壊、原因は何か。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/06/24 09:00
昨季の浦和は年間28失点と、1試合平均失点が1点台を下回っていた。その規律を取り戻せば、守備への不安の声は収まるはずだ。
今季は前線からのプレスに陰りがみられる。
ラインが下がりすぎるという問題は、チームが積極的な前線からの守備を導入することで近年は解決していたはずだった。昨季ベストゲームの1つに数えられる4月の川崎フロンターレ戦では、パスワークを生かした攻撃が持ち味の相手を、ボールを失った後の素早いプレスで敵陣に封じ込めた。
自陣にスペースを作ってしまう恐怖に打ち勝ち、最悪の場合はファウルになってでも止める。そうした強い意志を持った浦和の選手たちが、相手のボールホルダーに次々と襲いかかり、逆に二次攻撃、三次攻撃につなげていく展開はひとつの理想形だった。
しかし、今季はその前線からのプレスという面で、陰りがみられる。4日の柏レイソル戦でも、そうした強気の守備は影を潜めていた。相手のビルドアップに人数を合わせて前から守るのではなく、撤退して守備組織を整えた。
その結果、高い位置を取る相手サイドバックに対応するため、2シャドーが開いて守備に参加することを強いられ、自陣でボールを奪った瞬間に1トップの興梠慎三が孤立する場面が多発した。そして磐田戦でも、相手にボールを持たせて浦和が守備陣形を整えるという場面は多く見られた。一見、守備の安定感を高めているように見えるものの、これまで失点を抑えてきた方法とは逆を行くものになっている。
「下がって、何かできるという守備は向いてない」
柏木の言葉は、そうした昨季の武器が失われていることを表現していた。
「うちは下がって、下がって、何かできるという守備は向いてない。去年はもう少し前から行けていたし、そこから切り替えられたところがあった。今年は前線でファウルで止めるとか、そこからボールを奪って二次攻撃、三次攻撃できることが少ない。それが最大の守備だったんじゃないかなと」
つまり、敵陣で強く守ることが結果的に自陣の安定感を強めるということだ。もちろん、最初のプレスを突破されれば一気に人数の足りない自陣にカウンターを受ける。だが、相手のボールが落ち着く時間とスペースを与えないことで、カウンターの精度は大きく下がる。
現在の浦和は、その時間とスペースを相手に与えているために、かえって自陣に相手が良い状態で侵入してくるという状況を招いてしまっている。