“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ハリルジャパンは合宿で練習しすぎ?
イラク戦で怪我人続出の根深い理由。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/06/19 17:00
右ひざの故障で交代した酒井。所属するマルセイユでは、EL出場権をかけた厳しい戦いが続いていた。
何人かの選手には、オフを与えても良かったのでは?
前述した選手たちには、まずは3~4日のまとまったオフを与え、そこから戦術的な説明や動きの確認など、対人やフィジカルの要素を入れないトレーニングを徐々に取り入れていく形でも良かったのではないだろうか。
「心も身体も疲労している選手にオーバーロードをかけるのではなく、逆にアンダーロード(負荷にならないトレーニング。例えば戦術的なトレーニング)をすることで、心と身体の回復を促すほうが、コンディション維持に繋がる」(フェルハイエン)
もちろんこの疲労回復の措置を、代表合宿に参加した全選手に与える必要は無い。
前述した岡崎は負荷を上げた方がプラスに働くし、本田圭佑、長友佑都、浅野拓磨にとっても、今回の過酷な合宿はプラスに働いただろう。
だからこそ個別で緻密なアプローチが必要だったのではないだろうか、と思うのだ。
何試合も続く大会ではなく、今回はイラク戦の一発勝負。しかも、過酷な環境下での戦いが分かっていた状況だった。すべてを加味すると、イラク戦にピークを持っていくために、海外組合宿はもっと個別のコンディショニングに焦点を当てても良かったのではないだろうか。
ブラジルW杯直前にも、同じような経験をしていないか?
思い出して欲しい――日本はこのイラク戦のずっと以前にも、同じような痛い想いを経験していることを。
それは2014年のブラジルW杯だ。
この時の監督だったザッケローニ氏も、W杯本番前の疲弊した選手に追加する形で練習負荷を与えた結果、重要なW杯でケガ人やコンディション不良の選手が続出し、良いところが出せぬまま、2敗1分けに終わったのではなかったか。