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ハリルジャパンは合宿で練習しすぎ?
イラク戦で怪我人続出の根深い理由。
posted2017/06/19 17:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takuya Sugiyama
ロシアW杯アジア最終予選・イラクvs.日本。中立地のイランの首都・テヘランで昼間のキックオフで行われた試合は、「当初の予想通り」壮絶を極めた。
気温37度のうだるような暑さ、水分補給をこまめにしないとすぐに脱水症状になってしまう乾燥しきった空気、空気が薄い標高1200mの高地に加え、あまりお目にかかれないような硬いピッチ……慣れない環境での戦いは、選手の身体に想像を絶する負担を与えた。
過酷な環境の中で、日本の選手達は苦しみながらも1-1のドローという結果を残した。ホームでの次戦、オーストラリアに勝てばロシアW杯の出場が決まるという状況まで歩を進めたのである。
まずその功績を讃えたい。
足がつったり、身体が本当に動かなくなる直前という過酷な状況下でも、日本代表の誇りを胸に最後まで持てる力をフルに発揮した、代表の選手達には頭が下がる。
しかし、今回の試合は決して「苦しい中でよく頑張った」では片付けられないような、深刻な問題を内包していたと思う。
それはこの試合に臨むまでの代表チームを巡る「プランニング」だ。
「当初の予想通り」の過酷な条件なら、やるべきことは?
このコラムで重要な論点は、頑張った選手を否定している訳でも、ハリルホジッチ監督の試合采配、協会の各種スタッフを批判している訳ではない、ということだ。
今回の過酷な試合にあたっての重要なポイントは「当初の予想通り」という言葉だ。
気温が極端に高く、しかも日差しが非常に強い日中での試合、硬くて芝の状態も最悪のピッチコンディション、しかも高地で空気が薄い試合という条件が出揃った時点で、相当な負荷が選手に懸かる試合になることはずっと前から自明だった。
ターゲットとなる試合は大会期間中の複数の試合ということではなく、イラク戦の1試合のみだった。だからこそ、このイラク戦の日程にピークを持ってくるよう、コンディションを上げた状態で戦いに臨めるプランニングが必要だった。
しかし、イラク戦を控えた海外組のトレーニングの取材に行った時、筆者はある不安を抱えることになった。
それは……海外組の選手だけで行った一週間の合宿期間中、ハリルホジッチ監督はその選手達に2部練習や、フィジカル重視のランニングメニュー、対人を増やした強度の高いトレーニングを課していたことだ。