福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史「乾や岡崎を出せていれば」
イラク戦、不運で消えた切り札2枚。
posted2017/06/14 12:15
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph by
Takuya Sugiyama
中立地とはいえ気温は37度、標高が高くてピッチコンディションも悪い中で、イラク戦は勝ち点1という最低限の結果を得たなという印象です。ただ、ある程度割り切って勝利を求めにいきながらも追いつかれて1-1に終わった点を考えると、最高の結果とはなりませんでしたね。
個人的には試合前から“日本は後半勝負で行くんじゃないか”と予想していました。その中で試合開始早々、コーナーキックからから大迫の1点が入ったことで、戦い方に余裕が生まれました。
そこで守備への意識を強くして、それと同時に相手の攻撃を受けることを全員がイメージしていた。つまり、ロースコアで勝利するための戦い方を徹底しました。
チーム全体の決まりごととして、高い位置からプレッシャーをかけるのではなく、ある程度守備ブロックを作ってイラクの攻撃を跳ね返していく。そしてリスクをかけた攻撃を避けたので、シュート数も少なかったですよね。
とはいえ全員で意思統一した上で受けに回るのは決して悪くないと見ていたし、試合を通じてディフェンス面の集中力は高かった。それだけに同点ゴールでの守備陣の連係ミスだけが惜しまれるところでした。
アクシデントがなければ乾の投入も……。
その同点ゴール以上に、ゲームプランを実行する上で痛かったのはケガ人での選手交代でした。1人目は井手口が頭を打った影響で、今野と交代しました。また1-1の同点に追いつかれた直後に酒井宏が足を痛めて、最後の交代枠は同じサイドバックの酒井高を使わざるを得なかった。つまり、交代枠の3人中2人がアクシデントによる交代となってしまった。
予期しない交代が続いたことで、ピッチの選手へ“どうやって試合を進めるか”というメッセージを伝える交代ができなくなった。例えば同点の状況なら、乾や岡崎といった攻撃的な選手をつぎ込むプランはあったはず。これはハリルホジッチ監督にとって誤算だったでしょうね。
彼らのような攻撃的な選手を送り出せないということは、疲労しきっていた選手がピッチに残るということでもある。例えば久保は後半途中から足をつっていましたよね。ただイラクの消耗度も激しかったため、フレッシュな選手が前線に送り込めれば、もう少しチャンスの数も増えたでしょうね。後半勝負に持ち込もうとしながらも、切り札を使えなかったのは不運でした。