リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
バルサ新監督バルベルデとは何者。
バスクで磨いたクライフイズム。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2017/06/11 08:00
思慮深い表情を浮かべて就任会見に臨んだバルベルデ。黄金期を迎えた宿敵レアルに立ち向かえるチームを作れるか。
クライフに師事し、ポゼッションの薫陶を受けた。
スペインのサッカーメディアで彼は当時を思い出している。
「練習に関するクライフのアイデアは僕らのものとは全く違っていた。だから僕ら選手は大変な思いをした。現在一般的に行われている練習の多くは、あの頃のバルサから始まっている。クライフは厳しく、パスミスは一本たりとも許さなかった。いま盛んに言われているポジショナルプレイを植えつけたのもクライフだ」
ボール周りに数的優位な状況を作り続け、陣形上の優位をも徐々に拡大していく戦い方はグアルディオラ時代の成功の種であり、ルイス・エンリケ時代に弱体化したと指摘されているバルサの看板。これを修正する力がバルベルデにはあるわけだ。
'03年にアスレティックで1部の監督デビューを果たしたバルベルデは、その後エスパニョール、ギリシアのオリンピアコス、ビジャレアル、バレンシアと渡り歩き、十分な経験を積んできた。おまけにシーズン途中で解任されたビジャレアルを除いて全クラブで然るべき結果を出しており、エスパニョールでは乏しい戦力をもってUEFAカップ準優勝、オリンピアコスでは5つの国内タイトル獲得を成し遂げている。
多士済々のスターに“のり”をつけて取りまとめる。
しかしながらビッグクラブは未経験。
即ち、自我の強い世界レベルのスターを配下に置いたことはない。
バルベルデという選択について最も気がかりな点はここだが、彼自身に不安はないようだ。
「強い自我はサッカー選手にとって必要なもの。それがあるから選手は全力で戦おうとする。仲間のことを考えるだけでなく、『目立ってやろう』とか『際立ったプレイを見せてやろう』といった野心も選手は持つべきなんだ。100%を出し切るためにね。結局のところ、自意識が強く、他人の上に立ちたいと願っている者こそが偉大なチャンピオンになる。そんな選手たちの間に“のり”をつけて、うまくまとめるのが監督の仕事だ」