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安藤梢、7年半の経験を古巣浦和に。
ドイツと日本の「良い選手」の違い。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byTetsuro Kutsuwada
posted2017/06/07 07:00
長年なでしこの中軸として奮闘した安藤もベテランの域となった。海外での経験を将来有望な浦和の選手に伝えていくのも女子サッカーの糧となる。
「ツヴァイカンプフ」という用語に込められた意図。
「まずは戦えないと、試合には出られない。球際での戦いや最後まで走り切ること。相手を体ごと吹き飛ばすこと。ファウルしてでも止めることをアピールしないといけなかったので、その戦う姿勢は特に学びました。戦うところは、まだまだ日本人に足りないと感じます。最初はサッカーが格闘技だと思うくらいに違いましたね。うまさだけでなく、強さが日本に必要だとあらためて感じています」
ドイツ語には「ツヴァイカンプフ」という1対1の戦いを表現するサッカー用語がある。浦和はトップチームを率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督もドイツ語を話すが、この言葉は監督会見で「勝利するために必要なもの」としてよく話される。チームでは、球際の戦いに負けないことの重要性として受け止められているが、女子でもそれは共通のものだ。
「ドイツでは削られて血が出て痛がって、無視される」
だからこそ、トレーニングでもそういった要素に違いが出てくる。安藤は会見後、浦和復帰後初となる全体トレーニングに参加した。最後のメニューとして行われた11対11のゲーム形式にも参加し、ポジションごとのランダムに分けられたチーム分けでは2トップに入った。
現状は「ドイツで1シーズンをやって少し休んでいたので、コンディションをしっかり上げていきたい」という段階だけに、公式戦さながらのキレを見せていたというわけではないが、要所で縦パスを受けると味方にシンプルに渡し、スペースに飛び出していくプレーを見せていた。
違いは、その縦パスを受けた瞬間だった。安藤は前を向けなかったが、厳しく当たられたわけではない。周りの選手が遠慮していなさそうなのは、安藤以外の選手に対しても同じだからだ。実際、安藤も具体的にこう比較している。
「来ないなという感じがするくらい? そうですね。ドイツは練習でもかなり激しくて、ソックスも破れるし、削られて血が出る。傷んでいても『大丈夫?』と声を掛けられることもない。痛がっても無視されますからね。でも、そこがドイツだとむしろ一番大切なことなんです。当たり方の技術よりも、相手を吹き飛ばしに来るんです。体ごと“刈る”という感じで後ろから思いっきり飛ばされるんですけど、試合では審判もファウルを全然取らないですよね。そういう基準が全く違うんです」