炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島が仕掛ける打順革命、思想は?
新井が5番ではなく6番に座る理由。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/05/29 17:30
「4番」の重責を知る新井の背中を見て、鈴木誠也は“本物の4番”になっていく。
1番から8番まで「日本人の走れる選手で並べる理想」。
いずれの打者が出塁しても、相手バッテリーは走者を警戒しなければならず、100%打者に集中できない。コンディション不良の菊池を除く4選手は盗塁ランキングに名を連ねる。足がある走者を塁に置けば配球も変わってくる。
昨秋キャンプ中、東出輝裕打撃コーチは、1番から8番まで「日本人の走れる選手で並べるのが理想」と話していたが、ただの夢物語ではなさそうだ。
広島攻撃の頭脳とも言える石井琢朗打撃コーチは、現役時代に2000安打を達成しただけでなく、ゴールデングラブ賞4度受賞や投手で1勝(!)という実績もあるだけに、多面的に打順を並べる。
タイプ別に置くのではなく、打順構成も“つながり”ありき。
併殺になりにくい、守りにくい、走りにくいなど、いかに相手が嫌な並びになるか考える。打って、打って、打ってばかりが攻撃ではない。四球で出て走って進塁打から犠飛でも得点できる。
4番からずらした新井を、なぜ6番に置くのか?
新井を4番から外してしばらく、鈴木以降はエルドレッド、新井の並びだった。5番新井ではなく6番新井。普通に考えれば、直近まで4番ならば1つ打順を下げた5番に置くのが妥当だろう。
だが、そこにも明確な理由がある。
「4番誠也は足があるから攻撃の中で(盗塁を狙って)走る可能性がある。新井だとどうしても“走り待ち”をしてしまうことがある。エルドレッドはあまり気にしないタイプだし、エルドレッドが一塁にいて新井の打順であれば、新井も気にせずに打てるだろう」と石井コーチ。
6番であっても、当然エルドレッドが凡退すれば、鈴木を一塁に置いて打席に入ることはある。より確率の高い打順、並び、組み合わせを選択していることが好結果につながっていると言えるだろう。