オリンピックへの道BACK NUMBER
五輪前年に調整法を変えない勇気。
渡部暁斗、竹内智香が得た経験値。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2017/05/31 08:00
スキー連盟が初開催した「SAJ SNOW AWARD」。冬季競技の露出を増やす以外の価値もそこにはあった。
完成形にたどり着けず、時間切れになってはいけない。
オリンピックシーズンを迎えるにあたって、新たにチャレンジすることでより強くなろう、レベルを上げようとする選手がいることは確かだ。例えば、今までしたことのないトレーニングメニューを次々に加えた選手を見たことがあるし、強化が足りないと感じる部分に、それまでにないほど重点を置いた練習をする選手も見たことがある。
だが、それらが大会で功を奏したわけではなかった。「完成型」へとたどり着けず、中途半端にとどまったからだった。それは、大会までの時間を計算し切れなかったとも言い換えられる。「時間切れ」だったのだ。
どんな取り組みをしても、ピーク間に合わない、もしくは力を発揮できなければ意味はまったくない。だからどんなチャレンジするにしても、時間を合わせて計算するが重要となる。竹内と渡部はそれを肌身に感じているからこその言葉だっただろう。
ソチ以降、強化のために様々なトライをしたからこそ。
また、こう語ることができるのは、ソチ五輪後から3年間の裏付けがあるからだ。
「3年間でやってきたことを洗い直してしっかりと見て、自分の目と頭で考えていきます。必要なもの必要でないもの、それをしっかりと分けて、それを平昌(五輪)に持っていくことが今シーズンやるべきことだと思っています」(竹内)
「過去3シーズン取り組んだことで得たものがたくさんあるので、それを生かして集中したいと思います」(渡部)
ソチが終わってから昨シーズンまで、強化のために様々なトライをしてきた。そこで得られた手ごたえがあるから、ここからはその取捨選択をしつつ、完成型へと持っていけばよいと考えることができる。
言ってみれば3年間、大舞台を想定して怠りなく歩んでこれたどうかは、想像以上に大きなものとなる。それを知り、実践してきたところが、数々の経験を積んできた竹内と渡部ならではなのだ。