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アイスホッケー男子代表への失望。
反撃しない0-4に未来はあるのか。
posted2017/05/18 08:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
AFLO
第2ピリオド17分55秒、イギリスに4点目を決められた瞬間、「グサッ」という音が聞こえた気がした。
0-4。
とどめ、である。
おそらく、世界的にも、ほとんど誰にも注目されていなかったことだろう。4月下旬、北アイルランドの中心都市・ベルファストで、男子アイスホッケー世界選手権・ディビジョン1グループB(6チーム)が開催された。同グループは、世界アイスホッケーリーグの3部に相当する。会場となったSSEアリーナの周囲は、出場国の国旗さえ掲げられておらず、実にひっそりとしたものだった。
最終日の最終戦は、日本とイギリスの全勝対決となった。地元チームの大一番に、会場は満員にはならなかったものの7割方埋まり、それなりの盛り上がりを見せた。勝った方が来年、ディビジョン1のグループA(6チーム)に昇格を果たす。ちなみに、男子アイスホッケーでは、その上にさらにトップディビジョン(16チーム)が控えている。そこでの戦いこそ、今開催中の真の「世界選手権」なのだ。
日本も、イギリスも、どちらの国にとっても、2022年の北京冬季五輪を見据え、「絶対に負けられない戦い」だったはずだ。ところが、試合は一方的な展開になった。
アイスホッケーの4点差は、野球でいえば8点差。
アイスホッケーにおいての4点差は、ひとまず安全圏と言っていい。野球でいえば倍の8点差、バスケットでいえば5倍の20点差くらいの感覚がある。逆転の可能性は、極めて低い。
敗色濃厚な中で迎えた第3ピリオドの頭、ひとつの渇望があった。
いきなり6人攻撃を見せてくれ――。
3点差、あるいは2点差になるまで、ひたすらに。そこまで詰めれば、まだチャンスはある。
アイスホッケーでは、最後の第3ピリオド残り数分となり、1点差あるいは2点差の場合、キーパーを下げて、6人攻撃を仕掛けることがままある。この奇襲が成功するための絶対条件は、先に得点することである。得点を決める前に失点した場合、ほぼ試合終了。いわば、背水の陣だ。
したがって、ピリオドの頭から6人攻撃を用いるなど、もちろんナンセンスだ。0-5にされたら元も子もない。