“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「単なるスーパーサブじゃない」
U-20最強のドリブラー、遠藤渓太。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/05/18 17:00
ホンジュラス戦の試合後、「横浜F・マリノスの代表として恥ずかしくないようなプレーをしようと常に心掛けています」とコメントした遠藤。
もがき苦しむ日々に訪れた、U-19代表での転機。
「どんどん試合でシュートで終わる場面が少なくなっていると思います。どうしても横に横にドリブルをして、どうにもならなくなったら最後はパスに逃げていた。俊さん(中村俊輔)に『とにかくシュートを打っていけ』と励ましてもらったりもしたのですが、シュートが枠を捉えられなかったりで……」
もがき続ける日々の中で、好機が遠藤にやってくる。
2016年10月のAFC U-19選手権。
このチームでの遠藤はまだレギュラー的な存在ではなく、途中出場によって流れを変える存在の選手にしか過ぎなかった。
しかし決勝戦のサウジアラビア戦。出番がやって来たのは、0-0で迎えた59分のことだった。
徹底的に味方を助けるプレーをしたら……。
他のアタッカー陣が今大会でゴールを挙げている中、遠藤は未だにノーゴール。これまでの彼なら、その結果に焦り、無理に仕掛けたり、重要なところで消極的になったりと、悪癖が出てしまっていたかもしれない。しかしこの時に遠藤が見せたプレーは、徹底的に味方を助けるプレーだった。
「これまではどうしても『結果を残したい』という気持ちばかりが強くなってしまって、普通にクロスを上げればいい場面でも、強引に自分でえぐってしまって、相手に奪われたり、引っかかって空回りをしていたんです。でも、決勝は緊迫した0-0の局面だったし、『自分は今何を求められているのか?』だけを考えながらプレーをしました」
投入直後から、得意のドリブルでサウジアラビアの白い壁に向かって挑んでいったが、「仕掛けるタイミングにはこだわった」という。相手DF陣が後ろ向きになった時は強気で仕掛け、きっちりとブロックを作ってきたら周りを使いながら揺さぶっていく……と、強弱をつけてプレーしたのだ。
67分には左サイドでFW岩崎悠人のパスを受けると、切れ味鋭いカットインから強烈なミドルを放つ。ゴールこそならなかったが、遠藤のこのプレーが劣勢だったチームに反撃の糸口を生み出した。
文字通り、このワンプレーで流れが変わったのだ。