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ホンダ大不振払拭のきっかけに?
パワーユニット複数供給と政治力。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2017/05/10 08:00
ホンダの供給2チーム目となるザウバー(後方)。1993年参戦の古参チームだが、今季はマクラーレンとともに下位集団に沈む。
メーカーは長い目で開発、チームはすぐ結果を求める。
メリットは技術面だけではない。多くの政治的な駆け引きが行われるF1の世界では、選択肢を複数持っていることはあらゆる交渉において重要な役割を果たす。2年前、ルノーはPUを供給しているレッドブルとの関係が悪化。F1撤退の危機にさらされた苦い経験がある。現在もレッドブルにPUを供給しているものの、ワークスチームはあくまで自チームのルノーとなった。アビテブールはこう続ける。
「複数チームにPUを供給する上で重要になるのは、どのチームがワークスかということを見失わないこと。最も強いチームがワークスではない。というのも、F1チームとわれわれ自動車メーカーでは、F1に対するスタンスが微妙に違う。F1チームはレース屋で、F1でビジネスをしている。
一方われわれは自動車産業界でビジネスをしており、F1は開発の場だ。したがって、自動車メーカーが長い目で開発しようとしているのに対して、F1チームはすぐに結果を求める傾向がある。もちろん、われわれ自動車メーカーもF1界でレース活動をする以上、F1チームの考えを無視することはできないが、F1チームにも自動車メーカーが莫大な費用をかけてPUを開発しているからこそ、レースが成り立っているということを理解してもらわなければ、一緒に仕事はできない」
ロシアGP後にアロンソは怒りをぶちまけたが……。
先日行われたロシアGPで、ホンダのPUはスタート前に不具合を発生させ、フェルナンド・アロンソがスタートすらできずにレースを終えた。レース後のミーティングで、アロンソはホンダに対して怒りをぶちまけた。
「問題が多すぎる。いったい、どうするつもりなんだ」
長谷川総責任者は「それに対しては、謝るしかない」とホンダの実力不足を素直に認め、謝罪したという。だが、PUの開発の難しさを私たちメディアにこう語ってくれた。