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ホンダ大不振払拭のきっかけに?
パワーユニット複数供給と政治力。
posted2017/05/10 08:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
ホンダが、2018年から現在のマクラーレンのほかにザウバーにもパワーユニット(PU)を供給することが発表された。ホンダの長谷川祐介総責任者は、2チーム目への供給の目的を次のように説明する。
「ホンダはマクラーレンとともに2015年にF1に復帰したときから、複数チームに供給することを視野に入れて準備してきました。これは今回のホンダのF1活動がF1社会へ貢献するというホンダのコミットメントであるというだけでなく、1チームから2チームになることで実走行の機会が増え、われわれにもベネフィット(利益)になると考えています」
独占することでむしろメリットを放棄していた!?
では、なぜホンダはいままで複数チームにPUを供給しなかったのか。それは、昨年までマクラーレンの会長兼CEOとしてトップに立っていたロン・デニスがホンダを独占したがっていたからだ。実際、ホンダは2015年にF1に復帰した直後から、複数のチームと交渉していたと聞く。
そのデニスが、マクラーレン内部の政争に敗れる形で解任。急接近してきたのがザウバーだった。昨年、解任される直前のブラジルGPでデニス不在のマクラーレンのホスピタリティハウスに、ザウバーのモニシャ・カルテンボーン代表が入っていく姿が複数の関係者に見られていた。つまり、ホンダもザウバーもそしてマクラーレンも、ホンダが複数チームにPUを供給することに前向きだった。
現在、自らのチーム以外にレッドブルとトロ・ロッソにPUを供給しているルノーのシリル・アビテブール(マネジングディレクター)も、「データ収集という点で、技術的に多くのメリットがある」と、複数チームにPUを供給することは大きな意味を持つと語る。つまり、技術的なメリットをデニスは自ら放棄していたことになる。