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青山学院が42.195kmを席巻する日。
東京マラソン終盤に示した“遺伝子”。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2017/03/02 08:00
箱根駅伝に出られなかった鬱憤を晴らすように、中村祐紀はそのポテンシャルを見せ付けた。マラソンでも青学旋風が起こる日は近い。
1キロ3分で走り、後半どんどん順位を上げた中村。
「中村選手のケースでは、刺激入れの具体的なやりかたを何種類か用意しました。ただ、難しいのはそこからです。どのやりかたを何回、何セットやれば、もっとも効果的なのか。量が少な過ぎたら、改善が見られなかったり、遅かったりする可能性がある。そうかといって、たくさんやり過ぎるのは良くない。“刺激入れ”だけでなく、ストレッチでもリハビリでもそうですが、どんなメニューをどれだけやるのかについては、悩みが尽きることがないですね」
東京マラソンに臨んだ中村のフィジカルコンディションは、どのようなレベルにあったのだろう。栗城の表情に、笑みが広がった。
「レース2日前の金曜日にストレッチをしたとき、身体の状態がとても良かったんです。身体に触ってみると疲労が抜けていて、筋肉の反発が程良かった。中村選手らしい走りができるのでは、という期待が高まりましたね」
ラップタイムは1キロ3分ペースで刻んでいった。折り返しを過ぎたあたりから少しずつペースが落ちていくが、順位は上がっていくのだ。25キロを34位で通過した中村は、30キロを30位、35キロを23位でパスしていく。
40キロまでの5キロでは、さらに5つ順位をあげた。そのまま18位でフィニッシュしたのである。
青学はOB、現役含めて東京五輪を目指す選手が多い。
テレビ中継を観ていた栗城の胸を、興奮が駆け抜けていった。
「ゴール直前から中村選手をテレビカメラが捉えたのですが、僕はすごいなと思いました。ゴール寸前になっても、我々が言うところのコアが入った走りになっていたのです。無駄な力の入っていない脱力した状態で、走り初めのようなフォームでした」
青学駅伝チームのOBや現役のなかには、2020年の東京五輪出場を目ざす選手が多い。箱根駅伝の快走で“山の神”と呼ばれた神野大地(現コニカミノルタ)、今回の東京マラソンで20位となった橋本峻(GMOアスリーツ)らは原監督の門下生で、卒業後も『スポーツモチベーション』とのつながりを持っている。神野は独自にトレーニング契約を結び、橋本が所属するGMOでは栗城ら2名がフィジカルトレーナーを務めている。箱根駅伝3連覇の立役者のひとりである一色恭志も、卒業後の今春からGMOアスリーツの一員となる。