オリンピックPRESSBACK NUMBER
青山学院が42.195kmを席巻する日。
東京マラソン終盤に示した“遺伝子”。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2017/03/02 08:00
箱根駅伝に出られなかった鬱憤を晴らすように、中村祐紀はそのポテンシャルを見せ付けた。マラソンでも青学旋風が起こる日は近い。
青学駅伝チームを支える、4人のトレーナー。
青学駅伝チームのフィジカルトレーナーを務める栗城徳識(くりきあつし)は、そう言って小さく頷いた。中学時代にサッカーGKとして福島県選抜に選ばれ、萬代宏樹(水戸ホーリーホック)らとともにプレーした31歳は、クライアントを安心させる微笑みの持ち主だ。日本における体幹トレーニングの先駆者として名高い中野ジェームズ修一が率いる「スポーツモチベーション」から、栗城を含めた4人のトレーナーが青学駅伝チームに関わっている。
「箱根駅伝が終わったあとは、基本的にケアとリカバリーに時間を割いてきました。そのなかで、『こういうものをしよう』と僕らトレーナー側から提案するよりは、選手自身から『ストレッチをしてほしい』といったように、必要なものを申告してもらうのが基本的な仕事の進めかたです。選手が自主性を持って練習に取り組むのが、青学駅伝チームのやりかたでもありますので」
筋肉に均等に力を入れる“刺激入れ”。
今回の中村についても、初マラソン用にスペシャルなメニューを用意したわけではない。選手一人ひとりに合った無理のないランニングフォームと、ケガをしにくい身体作りを進めていくのが、栗城らフィジカルトレーナーの役割である。大切なのは日々の積み重ねだ。中野が考案して広く知られるようになったコアトレーニング“青トレ”にしても、毎日やることで効果が生まれる。
「中村選手について言えば、昨年の夏に故障をしたときに腸腰筋の“刺激入れ”をしたことがありました。腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉群を腸腰筋と総称するのですが、ここがうまく働かないと足を引き上げる動きがスムーズにいかないのです」
栗城が言う“刺激入れ”とは、筋肉を連動させるための働きかけである。
たとえば、3つの筋肉を使った動きがあるとしよう。それぞれの筋肉に均等に力が入らないと、ある筋肉に限界を超えた力が加わる恐れがある。それによって、痛みが発生する。3つの筋肉を同時に使えるようにするために、“刺激入れ”をしていくのだ。