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アメリカが勝たないとWBCが終わる!?
主催者は意欲的でも現場の関心は……。
posted2017/02/25 07:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
フロリダでメジャーリーグのスプリング・トレーニングの取材をしている。
2月下旬といえば、選手たちはエンジンをようやくかけ始めたといったところ。取材が終わり、夕方にショッピングモールに行くと、選手が家族と一緒にリラックスしている場面に遭遇したりする。なかなかよい光景である。
ところが同じ2月とはいっても、日本では様相が違ってくる。アメリカから日本のニュースサイトを見ていると、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開幕を間近に控え、「侍ジャパン」のニュースがどんどん流れている。メンバーが集合し、宮崎で強化合宿に入ったという報道。まったくもって、シリアス。刻一刻と、大事な大会が近づいている感じが伝わってくる。
いまだのんびりムードが漂うアメリカで、WBCについては、どう受け止められているだろうか? ニューヨークの新聞記者は、こう話す。
「ファンの関心は、ほとんどないね(笑)。それはメディアもそう。だってアメリカは、キャンプ地からも近いマイアミで1次ラウンドの試合があるんだけど、ニューヨークの本社は『WBC? 行く必要はないね』という反応なんだから!」
WBCよりも、ヤンキースやメッツの最新情報の方が、大事ってわけだ。
この温度差はいったい、なんなのか?
日韓、そしてカリブの2国では価値が上昇。
もともと、WBCという大会の「格」を保ってきたのは東アジアの力が大きかった。第1回、第2回と日本と韓国がしのぎを削り優勝を争ったことで、特に日本でのWBCの価値が飛躍的に高まった(現場で2次ラウンドの日本対韓国を観戦したが、数で優る韓国ファンの応援で、スタンドが凄まじい状態になっていた)。
4年前に開催された第3回は、決勝がドミニカとプエルトリコの「カリブ海決戦」となり、両国の選手の中で、仲間と一緒に野球が出来ることの重要性が生まれた。それも影響したのだろう、今回も両国からはトップ選手が参加する。メンバーの中で目立った名前をあげてみると……。