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大リーガーはトランプに物申さず?
米プロスポーツ界と、政治的発言。
posted2017/02/19 08:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
新しい国の首長や、その支持者に対して声を上げる。そんな勇気のある人間は残念ながら、メジャーリーグにはいない……今のところは。
米国だろうが日本だろうが、国の最高責任者の施政に対してメディアを通じて不満を表明すれば、大きな反響があって当然だ。フェイスブックやツイッターといったSNS全盛の世の中である。多数派と違う意見を言っただけで失言扱いになって、自分のアカウントが炎上する。意図的にそうすることでクリック数が増え、歓迎する人もいるだろうが、顔の見えない相手からの罵詈雑言に耐え切れないのが普通だ。それは理解できる。
NBA王者のコーチは入国制限令を公然と批判した。
それでもドナルド・トランプ新大統領がテロ対策として打ち出した特定の外国人の入国制限と旅行禁止令に、北米四大スポーツの選手やコーチたちが公然と口を開き始めた。その先陣を切ったのはNBA。彼らにとっては他人事ではない。入国制限の対象国であるスーダン出身の選手もいるのだ。
NBAは関係各省に即座に連絡を取って対策を話し合い、「我々は国際的なリーグであり、世界中から最高の選手が集まってくることに誇りを持っています」との声明を出した。
メディアの前で、はっきりと異論を口にしたのは一昨年の王者ウォリアーズでコーチを務めるのスティーブ・カーだった。カーが生まれたレバノンは入国制限の対象国ではないが、実父を1984年にベイルートで起きたテロで亡くしている。
「家族をテロで亡くした人間として話すが、この国の原則に反して、この国に来る人を追いやることでテロに対抗しているのだとしたら、間違っている。私だってテロや犯罪を解決したいとは思うけれど、こんな方法じゃない」