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陽岱鋼は有望、糸井嘉男は不安?
セ・パ間移籍と交流戦の相関性。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNanae Suzuki
posted2017/02/20 07:00
加入1年目でキャリア初の打率3割を目指すと公言した陽。交流戦での実績を通年で残せれば、決して大言壮語ではない。
内川、坂口も前所属で好成績を残していた。
2011年に横浜からソフトバンクにFA移籍した内川聖一は、'05年と'07年の交流戦こそ規定打席未到達だったが、それ以外の4シーズンは安定した成績だった。特に'08年、'09年は打率3割2分台のハイアベレージを残した。そしてソフトバンクに移籍して以降は、6シーズンで5度の打率3割台キープを達成。加入1年目には首位打者にも輝いている。
2016年にオリックスからヤクルトに移籍した坂口智隆も交流戦で活躍している。出場した5シーズンのうち、3度の打率3割以上を記録。特に'10年は.389で2位、'11年には.412で1位に輝いた。また'13年はシーズン成績こそ打率.230、3本塁打と振るわなかったが、交流戦では打率.319(12位)、本塁打2と相性の良さを発揮していた。移籍1年目となった昨年は打率.295、155安打を放ち、交流戦の相性のよさがそのまま反映された。
片岡、大引のケースも踏まえると、陽と糸井は……?
3人とは対照的に、苦戦を強いられている代表格は片岡治大、大引啓次だ。
'14年に西武から巨人にFA移籍した片岡は、西武時代の交流戦で打率2割8分以上をマークしたのは3シーズンのみだった。巨人移籍後の3年間でシーズン100安打以上は加入1年目だけで、昨年は32試合出場にとどまっている。
'15年に日本ハムからヤクルトにFA移籍した大引は、'13年の交流戦で打率.293をマークしたものの、'12年、'14年はそれぞれ.195と.209の低打率だった。ヤクルトでの過去2年間でも、その低調さが持ち越されている印象だ。
今年の陽と糸井はどうだろう。陽が本格化した'11年以降、コンスタントに好成績を維持している。'13年は打率.324、'16年は打率.329、そして'14年は規定打席未到達だが打率.407、本塁打3。平均的に好成績を挙げている選手は過去の例から見てもセリーグの野球に対応できており、期待は高まる。
少し心配なのが糸井だ。もともとは“交流戦男”と形容できるほどセリーグ相手の戦いを得意としており、特に'11年、'12年はそれぞれ打率.351(3位)と.326(4位)で、他のシーズンも3割以上をキープしていた。それが過去2年は急ブレーキがかかっており、'15年は打率.226、'16年は.231。シーズン成績は悪くないとはいえ、直近の交流戦の実績は気になる。