岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER

ラグビー代表GMから7人制総監督へ。
岩渕健輔が語る大きな決断の理由。 

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岩渕健輔

岩渕健輔Kensuke Iwabuchi

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photograph byWataru Sato

posted2017/02/11 11:00

ラグビー代表GMから7人制総監督へ。岩渕健輔が語る大きな決断の理由。<Number Web> photograph by Wataru Sato

日本ラグビーにとってエポックメイキングな事件を起こし続けたGMでの5年間。岩渕氏は、次に何を見せてくれるのだろうか。

明らかに時間が足りない7人制を、自分の手で。

 では、どうして7人制の総監督なのか。

 日本ラグビー界の50年先、100年先の未来を見越したときには、ラグビーワールドカップも五輪も、決定的に重要な大会です。

 しかしそれを踏まえた上で、私はあえて7人制の強化に携わる道を選びました。15人制に比べた場合、7人制は強化の枠組み作り自体が遅れているからです。

 15人制の代表ではジャパンラグビートップリーグに加え、スーパーラグビーへの参戦も実現しました。イングランド大会と日本大会に向けてプロジェクト型の強化を行いながら、長期的視点に立ったシステム作りも進んでいます。

 しかし7人制の場合は、強化の枠組みができたとは言い難いのが実情です。この現状を踏まえた場合、ラグビーワールドカップ日本大会に向けた強化よりも、東京五輪に向けた強化の方が明らかに時間が足りないと判断しました。

 男子7人制に関しては、日本協会では7人制に専念できる選手を増やすべく、協会が直接選手と契約を結ぶことも含めた「専任化」の方向を打ち出しました。

 この試みは、東京五輪に向けた代表強化の鍵を握ります。たしかに代表チームはセブンズシリーズという国際大会に参戦していますが、そもそも国内リーグ自体が存在せず、選手の数も圧倒的に不足しています。プロジェクト型の強化を急ピッチで進める上でも、まずは7人制に専念できる選手を、1人でも多く増やしていくことが求められます。

短期強化と長期ビジョンの両立を、もう一度実現する。

 同時に私たちは、男女を問わず、世界と戦うための「システム」も整備していかなければなりません。具体的に言うなら、7人制の国内リーグを設立する道を模索していくことが不可欠になるでしょう。やはり7人制も含めて日本ラグビー界全体の底上げを図っていかなければ、東京五輪が終わった後、世界と戦い続けていくことが難しくなるのは目に見えています。

 2012年にGMに就任した際、私が最も腐心したのも、短期的な目標と長期的なビジョンを両立させることでした。

 まずイングランド大会に向けて、代表チームをプロジェクト型で一気にレベルアップさせる。これに並行して、日本大会に向けてスーパーラグビーへの参戦を実現し、システム型の強化に移行していくことを目指しました。

 選手の専任化やプロジェクト型強化が即効性のあるカンフル剤なら、根本的なシステム作りは、長期的な体質改善だと言えるかもしれません。

 15人制で2つの試みが結実したことは、皆さんもご存知のとおりですが、今後は7人制代表の総監督として、同じ課題に取り組むことになります。

【次ページ】 日本の伝統と世界基準を融合させてこそ、世界と戦える。

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岩渕健輔
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