“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小林祐希「全て俺がやらなくていい」
“大人のプレー”を生んだ名波の教え。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/02/02 11:00
インタビューに応じてくれた時のオランダでの小林。海外移籍で心身ともに鍛えられている様子が、よく分かる取材だった。
戦術理解が深まるにつれ、プレーの幅も広がった。
「オランダに来て、日本よりもかなり細かい戦術というか、1対1でハメていくことを覚えた。監督は、相手が3バックだったらこうハメる、こういう形ならこうハメる……という戦術を明確に持っているので、それを俺は学んでるところ。今では『監督はこう言っているけど、自分の中ではこうしたい』といろいろ考えられるようになった。戦術をしっかりとチームに浸透させようとしている監督の下でプレー出来て凄くありがたい。チーム戦術だけではなく、個人戦術ですよね。それを理解して形に出来るようになって来たのは大きいですね」
加入僅か半年で、彼はオランダの「8番」(バランサータイプのボランチ、もしくは2シャドーの一角)と「6番」(アンカー、守備的ボランチ)のポジションで、ストレッペル監督からの絶大な信頼を掴み、不動の地位を築いている。
この信頼の証として、ある試合では試合途中にCBを任されるなど、「必ずピッチ上にいて欲しい」選手にまで成長を遂げた。
彼がこうした大人の考え、立ち振る舞いに至ったのは、過去の経験にあった。
「俺はヴェルディで一生プレーするんだろうな」
彼は東京ヴェルディで、プロ2年目の19歳にして、10番のキャプテンという大きな重責を背負っていた。
当然、キャプテンでのその年齢はクラブ史上最年少。「もともと責任感は強いタイプ」と分析する彼は、その責任を一身に背負い込んでしまった。
「俺が中学から高校に上がったときは、『俺はヴェルディで一生プレーするんだろうな』と思った。海外へのチャレンジはあっても、日本でやるならヴェルディで、俺がJ1に上げて、定着させて優勝させる。その中心が自分だと思っていた。でも、それを実現させなきゃいけない時期が早く来てしまった。10番でキャプテン――『もっとやらなきゃ、今のプレーのままじゃダメだ』と常に思うようになって、自分が良いプレーをしたのに、『俺10番だし、キャプテンだし、これが当たり前なんだ』と、自分自身を褒めてあげられなくなっていた」